国際情報

バイデン新政権下での日米関係「外務省はやりやすくなる」と池上彰氏

バイデン政権では日米外交にどんな違いが?(写真/AFP=時事)

バイデン政権では日米外交にどんな違いが?(写真/AFP=時事)

 1月20日にジョー・バイデン大統領が就任。アメリカの同盟国である日本には、どんな影響があるのだろうか。長年大統領選を取材してきた池上彰氏と、アメリカでトランプ陣営への潜入取材を続けてきた横田増生氏が緊急対談した。

 * * *
横田:日米関係はどうなるでしょうか。

池上:外務省からするとトランプ氏は予測不能だけど、常識人のバイデン氏なら何をするかが読めます。多国間の関係も重視するので、外務省はやりやすくなるでしょう。

横田:確かにトランプはすべて損得勘定の人で、グループよりも2国間の関係重視でしたからね。

池上:ただし米中が対立して「どっちにつくんだ」と迫られたら、日本は困ります。自由と民主主義という理念でいえば、もちろんアメリカが大事だけど、経済面で中国を切るわけにはいきません。冷戦時代に中国との関係では政治と経済を分ける「政経分離」が唱えられましたが、その現代版になる気がします。

横田:世界的にも中国の経済力に同調する国は増えるでしょうか。

池上:東南アジアやアフリカなど、中国に肩入れする国は間違いなく増えています。ただ中国の経済力を頼りにしてきたEUは近年、メルケル首相のドイツを中心に中国離れが進んでいます。それは中国から遠いからできるわけであって、隣国である日本ではそうはいかない。今後、バイデン氏から「中国の技術を使うな」などと横やりが入ると、日本は非常に苦しい立場になります。

横田:とはいえ、今のアメリカは日本のことは眼中にないですよね。今回の大統領選ではトランプのスピーチを数多く聞きましたが、彼の口から「ジャパン」と言う言葉が出てきたことはほとんどありません。1回だけ「俺がアベ(安倍晋三・前首相)にミシガンの工場を作らせた」と自慢していましたが、まるっきり嘘ですから。

池上:バイデン氏の演説にも日本への言及はありません。私は2008年から大統領選を取材しているけど、大統領候補が日本に触れることはなく、日米関係を気にしているアメリカ国民は皆無と言っていい。ヨーロッパやロシア、中国には関心がある一方、日本はどうせ仲間だろうとの意識もあるし、そもそも日本がどこにあるかわからないアメリカ人がたくさんいます。

横田:日本のニュースはほとんど報じられないから、菅政権が誕生して何がどうなったか、僕にはよくわかりません。

池上:バイデン氏が当選した時、トランプ氏と昵懇の安倍さんが首相だったら困ったでしょうね。「バイデン次期大統領」と言おうものなら、トランプ氏に「シンゾー、お前は認めるのか。この裏切り者」と詰られたかもしれない。

 その分、菅さんとバイデン氏なら余計な心配をせず、「仲良くしましょう」と話ができます。ただしバイデン氏と菅さんでは、本当に地味な印象になります(苦笑)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン