「この状態では借金もできないし、借りられても返す宛がない。死んだ父が建てた家に、母親が逝くまでは住み続けたいと思っていましたが、もう売るしかない。築20年経っていて、上物(建物)の価値はほぼゼロ。土地代が数百万にはなると不動産屋に言われました。売却して、そのお金で母親には施設に入ってもらう予定です。でも、コロナだから、入所のハードルがどこも高くて」(浜田さん)
自身の行く末についても、不安が尽きない。
「母のことが好きでしたから、なんとか最後までと思っていたので情けなくて……。私も一人暮らしとなりますが、収入はゼロになる。もうバイトができる年齢でもありません。恵まれた生活をしていたわけでもなく、静かにひっそり暮らしていただけなのに……。GoToイートが再開されるという報道もありましたが、世間の反応は冷ややか。私だってこの状況で、外食したいとは思わない。ワクチンがあれば、数ヶ月後には良くなっている……どうしてもそう思えず、それまで持たないんです」(浜田さん)
緊急事態宣言下でも、都市には人が溢れ、通勤客や買い物客が行き交っている。感染が再拡大しているといっても、自分の周囲には感染して死にそうになった人はいないからたいしたことない、そう思う人が少なくないのだろう。本当は、交通事故に遭って救急車を呼んでも救急患者がたらい回しにされ収容先が決まらないなど「医療崩壊」が顕在化している現実もあるのだが、その深刻さは人々には届かない。この状況をよくするには、社会全体で感染対策を徹底するしかないのだが、少しくらい問題ないだろうと考える人が増え、もはや「感染爆発」まで秒読みの状態。同時に、困窮者の数も、爆発的に増えつつあるのだ。
緊急事態宣言の深刻さを真面目に受け止める人が増えない限り、この不自由な状態は長引くことになる。そしてその裏では、声も上げられず、ひっそりと全てのことを諦めざるを得ない状況へ追い込まれる人が、続々現れ始めている。