国内

日本中が絶望にある今の状況を「歓迎」する人の声

緊急事態宣言を受け、首都圏在来線の終電繰り上げ。仕事や生活が大きな影響を受けている(時事通信フォト)

緊急事態宣言を受け、首都圏在来線の終電繰り上げ。仕事や生活が大きな影響を受けている(時事通信フォト)

 他人の不幸は蜜の味、とはよく言うが、この新型コロナウイルスによって仕事、生活、人生、ひいては社会が予想しない方向へ向かおうとしていることを、大歓迎で楽しいとさえ感じる人たちがいる。ライターの森鷹久氏が、なぜ彼らが「喜び」を感じているのか聞いた。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、全国の失業者が8万人を超えたことが厚生労働省の発表で分かった。この数は、今後も増大する可能性が高く、コロナに感染するかもしれないという恐怖以上に、社会に暗い影を落としている。

 しかし、日本国中が絶望にある今の状況を「歓迎」するという人々もいる。

「幸せだった人、順風満帆の人生を送ってきた人たちが、コロナで辛い目にあっているという姿を見るのが、正直快感というか。これまで頑張ってきた人達が苦しみ、頑張ってもどうにもならず、頑張ることを辞めた私は、以前と変わらない生活を続けられている。みんなはマイナスだが、私は現状維持。その差こそ、初めて感じた『喜び』です」

 埼玉県在住の小川栄吾さん(仮名・47歳)は、就職氷河期ど真ん中に大学を卒業。第一志望だった保険会社、商社の採用からはことごとく漏れ、現場作業員などのアルバイトを経て、知人の紹介で全く希望していなかった清掃会社に入社したという経歴を持つ。

「都内の大きなビルに常駐し、ひたすら館内の清掃を行います。自分と同じくらいの年齢のサラリーマンが、ビシッとスーツ姿で、かわいい女性社員を引き連れて歩いていたり、商業施設で買い物をする若者を見ていると……俺は何なんだって、絶望しかありませんでしたよ」(小川さん)

 就職に失敗し、30代を過ぎてもまともな仕事にすら就けない友人と比較すれば自分はマシだと思えた。だが、いつまでも「自信」を持てない小川さんは、仕事のことを聞かれるのが嫌で、友人との飲み会や会合からも足が遠ざかった。当然、出会いといえる機会もほとんどなくなった。

「職場ではそれなりに昇進し、清掃作業監督者などの資格も取得しましたが、長くいればいるほど、この業界から足を洗えないし、潰しが利かなくなる。かといって転職しようにもその気力はない。そんな感じでズルズルきました」(小川さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン