変異株が流行する英国でも、元金メダリストが否定的な見解を示した。
「ワクチン接種は人道的な観点から、壮健なアスリートよりも重症化リスクの高い人を優先しなくてはいけない」
そう話すのは、1992年バルセロナ五輪の柔道52kg級銀メダリストで日本女子体育大学教授(体育学部運動科学科スポーツ科学専攻)の溝口紀子氏だ。
溝口氏は、アスリートにとってワクチンを打つかは非常にデリケートな問題だとも指摘する。
「ファイザー社などのmRNAワクチンが、性ホルモンや筋肉にどのような影響があるのかを示すエビデンスがはっきりしていないことに困惑している選手もいます。
また、国際大会である以上、国による文化・慣習の違いの問題も出てきます。私が女子柔道フランス代表のコーチをしていた時に、インフルエンザのワクチンを打ちたいと思ってチームドクターに相談したところ、“自分で罹患して免疫を持ったほうがいい”と言われた経験があります。
フランスでは、よほどリスクの高い人でない限り、ワクチンを投与するという考え方が定着していない。現地でコロナワクチンの接種ペースが想定より大幅に遅れていることには、そうした国民性も背景にあると考えられる。全世界の参加アスリートに一律で優先接種というのは、ある種の強制措置ですが、すべての選手がそれをありがたがると思っているのだとすれば、大きな間違いです」
「もっと声をあげるべき」
溝口氏が指摘するように、ワクチン問題に敏感な反応を見せる選手もいる。12月5日に開かれた陸上長距離の代表内定会見では、女子1万mで五輪代表の座を勝ち取った新谷仁美が、ワクチンの副反応を懸念して「正直受けたくないと思っている」「安全性が確保されている証明がないと、ただただ怖いだけ」といった率直な思いを口にした。
新谷は五輪開催の可否についても、「国民の皆さんがやりたくないと言っていたら、開催する意味がなくなってしまう」と自分の言葉で考えを語っている。