スポーツ

篠塚和典が振り返る 1979年、巨人「地獄の伊東キャンプ」の絆

元巨人・篠塚和典(左)が、「地獄の伊東キャンプ」を振り返る(時事通信フォト)

元巨人・篠塚和典(左)が、「地獄の伊東キャンプ」を振り返る(時事通信フォト)

 プロ野球春季キャンプは異例の無観客で行われ、厳しい練習に選手が顔をしかめる“球春の風物詩”を現地で見ることはできないが、球史には伝説として語り継がれるキャンプが存在する。元巨人・篠塚和典が、1979年秋季の「伊東キャンプ」について振り返った。

 * * *
 時は1979年10月、第1次長嶋政権下にあった巨人は、この年のシーズンを5位で終えた。V9達成から6年が経過し、V9戦士が続々と花道を飾っていく一方で、若手が思ったように育っていない──長嶋は将来のジャイアンツを案じていた。

 そこで、江川卓や西本聖の投手陣、中畑清や篠塚和典(当時は利夫)ら野手陣、総勢18名の精鋭を集め、43年ぶりとなる秋季キャンプを静岡県伊東市で実施する。10月28日から翌月の22日まで、ほとんど休みなく猛特訓が続いた地獄の伊東キャンプである。

 篠塚は初日の朝、長嶋が18人を前に訓示を述べ、胸を熱くしたことを覚えている。

「王(貞治)さんは翌年に引退するんですが、低迷している現状と、未来のジャイアンツを考えた時に、僕ら若手のことを誰よりミスターは心配していた。『ここにいるメンバーがこれからのジャイアンツを引っ張っていくんだ』と言われてね。何度もキャンプは経験したけど、ああいう檄を初日にもらった記憶は他にありません」

 篠塚は1975年のドラフトで巨人に入団。長嶋が周囲の反対を押し切って1位指名し、獲得した選手だった。だが、4年目となるシーズンも、1軍と2軍を行ったり来たり。レギュラーには遠く、ポジションも定まっていなかった。

「入団の経緯を入団後に知って、ミスターに恥をかかせられないという一心でした」

 キャンプ中は伊東スタジアムの三塁側に建つ宿舎で寝泊まりし、練習は朝9時半から日が暮れるまで行われた。それまで遊撃や三塁のポジションに就くことが多かった篠塚は、このキャンプではとりわけ二塁に入ってノックを受け、それが毎日1時間半から2時間は続いた。

「特守というのは、体力を鍛えながら、球際の強さといった捕球の技術を磨く。長い時間ノックを受けて、身体が疲れた時にどれだけボールを追いかけて、捕れるか。三塁や遊撃のポジションに就くこともあったし、外野に入って(レフトとライトの間を走りながら捕球させる)アメリカンノックなんかもやったりした。そりゃあ守る方もしんどいけど、打つ方も同じように大変だったと思うよ」

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン