スポーツ

秘蔵写真で振り返る1985年のダンプ松本 「史上最凶」の素顔

女子プロレス黄金期のダンプ松本の戦いと素顔を振り返る

女子プロレス黄金期のダンプ松本の戦いと素顔を振り返る

 まばゆい光を放っていた女子プロレス黄金期には、数々の名勝負や名レスラーが産まれた。中でも「史上最凶の悪役レスラー」として君臨したのがダンプ松本だった。ノンフィクション作家の柳澤健氏が、ダンプ松本の戦いと素顔を振り返る。

 * * *
 女子プロレス人気の頂点は1985年にあった。長与千種とライオネス飛鳥のペア“クラッシュ・ギャルズ”と、ダンプ松本率いる“極悪同盟”の対決は、女子中高生を熱狂の渦に巻き込んだ。

 1985年8月28日に大阪城ホールで組まれた長与千種対ダンプ松本は、敗者髪切りデスマッチという女子ならではの試合形式で行われた。入場時、長与千種は羽織り袴姿、額にはハチマキを巻いて、選手たちの騎馬に担がれて登場した。のちに判明したことだが、千種が見せようとしたのは、美しい若武者が、討ち死にする姿だったのだ。

 敵役であるダンプ松本は千種を鉄柱に叩きつけ、鎖で殴りつけ、首を絞めた。ダンプの反則攻撃と、見て見ぬ振りをするレフェリーのホセ・トーレスに、観客である女子中高生たちの怒りは沸騰した。

 血まみれにされて敗北したスーパーヒロインは、リング上で椅子に座らされて、ハサミで髪を切られ、バリカンで丸坊主にされてしまった。まるでキリストが十字架に磔になったかのようなカタストロフを見せつけられた観客席の少女たちは泣き叫び、巨大な大阪城ホールは異様な緊張感に包まれた。

 試合を実況した志生野温夫アナウンサーは「この熱狂ぶりはただごとではない。もはやプロレスの領域を逸脱している。このままでは死人が出てしまうぞと思って怖くなりました」と語ってくれた。

「私が求めるのは平家物語の滅びの美学なんです」とは、長与千種の言葉だ。ダンプ松本は『ダンプ松本「ザ・ヒール」』(小学館)の中で、次のように証言している。

〈命の危険を感じたことは何度もある。大阪城ホールの髪切りマッチで千種を丸坊主にした時は、試合後に極悪同盟のバスを500~600人のファンが取り囲んで車体を揺すりながら、「ダンプ出てこい!」と罵声を浴びせてきた。あの時はさすがに「殺される!」と思ったな〉

 ルックスにも運動神経にも恵まれなかった少女が、日本経済がバブルの頂点へと向かう最中、女子プロレス史上最高の天才である長与千種を痛めつけるヒール(悪役)レスラーという役割を担って少女達の憎しみを一身に浴び、数千万円の年収を稼ぎ出していたことや、全日本女子プロレスの経営者である松永兄弟が、あることないことをクラッシュや極悪軍団に吹き込み、両者の憎しみを何倍にも増幅させたことについては、『ザ・ヒール』を読んでいただく以外にはない。

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン