芸能

香取慎吾『アノニマス』 独特の映像表現が掻き立てるスリルと臨場感

(時事通信フォト)

香取慎吾にとって、SMAP解散以降初のドラマ主演作となる(時事通信フォト)

 成功体験は良い意味でも悪い意味でも製作者を縛る。逆に、新たに挑戦する陣営にとってみればそう言った物差しがないことが功を奏することもある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。

 * * *
 一般ウケを意識しすぎず、キラリと光る個性的な表現を追求できるのが深夜ドラマ。中でもテレビ東京は秀作を世に放ってきました。直近を振り返ると『デザイナー 渋井直人の休日』『きのう何食べた?』(共に2019年)、『捨ててよ、安達さん。』(2020年)といくつもオススメ作品があります。

 それぞれが個性的な世界でしたが、共通する魅力があるとすれば……そのドラマの中にしかない独特な空気感が漂っていること。ドラマが始まったとたん、視聴者を別の世界へと連れていってくれること。作品の独自のトーンにどっぷりと浸かってひとときを過ごせる点ではないでしょうか?

 さて、ドラマ世界に入りこむ、という娯楽的至福でいえば、今テレ東が放送しているオリジナルドラマ『アノニマス~警視庁”指殺人”対策室~』(月曜午後10時)もそう。

 ただし放送時間は深夜帯ではありません。「午後10時」というプライム枠であり、かつメジャーな人気者を主役に据えています。これまでテレ東が深夜帯で着々と培ってきた演出力やこだわりのある作品作りの力を、プライムタイムに放出している、という印象を受けます。

 このドラマ『アノニマス』は毎回、顔の見えない犯罪者=アノニマスを捜査し犯人をつきとめていくオムニバス的クライム・サスペンス。タイトルの「アノニマス」は「匿名」の意味で、物語の舞台は警視庁SNS専門の指殺人対策室。「指殺人」とはキーボードによる殺人を意味しネット上での中傷をテーマにしています。

 主人公・元警視庁捜査一課刑事の万丞渉(ばんじょう・わたる)を演じているのがSMAP解散以降、初の地上波ドラマ主演となる香取慎吾さん。何よりも特徴的なのが、主人公の人物造形でしょう。

 しゃべらない、笑わない、動かない--三拍子揃っていて万丞の独特の魅力となっています。セリフは限られていて語らないシーンも多いのですが、黙っている時でも奥歯を噛みしめている。それが皮膚のかすかな動きからはっきりと伝わってくる。「万丞の感情が動いている」ことが、手にとるようにわかるのです。

 その万丞という人、いつも釣り堀で「釣り」をしていて、「地図」「手帳」「ペン」にこだわる。アナログアイテム揃いもキャラクターの個性として効いています。

 万丞は過去の出来事によって第一線から外された一匹狼で心に傷を抱えています。どうやら「釣り」と過去とが関係あるらしい。巧妙に伏線が張られていて断片的な映像が挿入されますが、全貌は明かされていません。

 その他「指殺人対策室」には、出世から脱落した個性的なメンバーが揃っています。

 万丞をサポートする碓氷咲良役に、グラビアアイドル出身の関水渚。勢いが良くて前のめりな若き巡査部長としていい味を出しています。また、情報収集と特定を得意とする鬼女的巡査部長・菅沼凛々子役にMEGUMI、万丞の元相棒で過去にからむ倉木セナ役に映画『新聞記者』で主演女優賞を総なめにしたシム・ウンギョン、万丞のライバル役には山本耕史とツワモノ揃い。

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン