宮田亮平文化庁長官は、東京五輪のメダルデザインの会長も務める(時事通信フォト)

宮田亮平文化庁長官は、東京五輪のメダルデザインの会長も務める(時事通信フォト)

 文化功労者は、文科省の設置した文化審議会文化功労者選考分科会のメンバーの推薦があり、そこで審議されて選出される。有識者による第三者機関による選出は文化勲章と同じく、政治色を排除するためだが、必ずしもそうはなっていない。政治の側が推薦人である審議会のメンバーを恣意的に選べば、思い通りの人選が可能なのである。

 おまけに法の改正という国会議員の立法行為が、文化功労者の候補資格を変えた。2017年6月に施行された改正文化芸術振興基本法で、文化功労者の選定方針の〈文化芸術の振興に資する取組〉が加わり、学術や芸術分野で活躍してきた第一人者に限られていた文化功労者の候補が、企業経営者にまで広がった。さらにそこに明記された〈作品の展示〉がクセモノで、まさに滝が熱心に取り組んできた事業でもある。

 もともと父親の始めた旧国鉄の駅ナカ広告事業を受け継いだ滝は、現在も公益財団法人・日本交通文化協会理事長を務める。駅や空港、学校などの公共施設への芸術作品展示を働きかけてきた。改正文化芸術振興基本法に謳う作品の展示、つまりパブリックアートは滝の得意分野である。とどのつまり、法改正そのものが滝のためのようにも受け取れるのだ。

 法改正の結果、文化功労者の選出は、それまでの15人から20人に増えた。増員が企業経営者の枠なのだろう。その選出枠の拡大は、奇しくも滝が東京藝大に寄付した2018年以降からで、寄付を受けた藝大学長の澤和樹が分科会委員となり、滝の推薦人となったとされる。

 だが、滝の文化功労者実現に関わったのは藝大の澤だけではない。むしろキーマンは、澤の前の学長であり、目下、文化庁長官を務める宮田亮平である。

 そしてそこに第二次安倍内閣の官房長官であった菅が、ひと役買った。菅、滝、宮田それぞれが極めて濃密な人間関係を築き、その先に、今度の文化功労者選出人事があると見ていい。

「お引き受けします」

 東京藝大学長の澤と、前学長で文化庁長官の宮田について、政府の関係者は言った。

「滝さんとのつながりでいえば、前学長の宮田さんのほうが古く、ずっと濃いでしょう。もともと宮田さんが滝さんと親しく、熱海のギャラリーにしょっちゅう出かけ、自らの作品も展示しています。宮田さんの意向を後任である澤さんが引き継ぎ、今度の選出になったのだと思います」

 宮田はイルカをモチーフにした金工作家として知られる。2005年12月、東京藝大の副学長・理事から学長に昇進した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン