1990年代から現在に至るまで滝が依頼し、JRや地下鉄の駅構内に宮田作品を設置。滝が理事長を務める日本交通文化協会のホームページでは、これでもか、とばかりにそれらを紹介している。高崎駅の「幸福のだるま」や北千住駅の「乾杯」、東京メトロ池袋駅「幸せのリング」、東京メトロ上野駅の「上野今昔物語」といったアンバイだ。これらが文化功労者選出の理由となったパブリックアートだと評価されている。
ちなみに宮田が訪れてきたと先に触れた滝の熱海のギャラリーは「クレアーレ熱海ゆがわら工房」という。滝は定期的に「くれあーれにゅーす」なる小冊子を発行し、関係者に配ってきた。
「東京五輪と文化」座談会
その2014年10号(8月20日発行)には、特別企画と題し、宮田や滝に加え、官房長官として菅自身も座談会に参加し、滝のインタビューを受けている。題して〈オリンピック開催を機に「文化国家 日本」の宣言等について語り合う〉──。
折しも2020東京五輪の開催が決まったすぐあとの企画だ。滝は自ら発案したペア碁を五輪競技に加えようとしてきた。それもあり、インタビューにも熱が入っている。
〈菅長官は(中略)オリンピック・パラリンピックを招致できた中心的な立場のお一人であり、これから2020年に向け、「文化国家 日本」を売り出す立場にもあります〉
滝がそう持ちあげ、菅が答えている。
〈2020年を新たな日本を創造する年にしたい。東京だけのオリンピック・パラリンピックではなくて、日本全体のオリンピック・パラリンピックにするのが政府の役割だと思っています〉
2020年の東京五輪開催はコロナのせいで実現できなかったが、滝はこの年、文科功労者に輝く。
さらにくだんのインタビューから2年後の2016年2月、宮田の文化庁長官就任が発表された。すると、滝は日本交通文化協会で〈「1%フォー・アート」の法制化を〉とパブリックアートの法制化を訴えるようになる。
〈当協会では早くから、駅や空港、学校、図書館などの公共空間にアートを設置するパブリックアートの普及・振興に努めてまいりました。人々が日常的に芸術・文化に触れることで美的感覚や情操を養い、これがひいては社会をより多様性溢れる寛容で豊かなものにすると考えたからです〉(2016年2月24日付ホームページより)