文化勲章や文化功労者の決定に文化庁が関わるのは自明だが、滝や菅は宮田と極めて個人的な関係があるようだ。先の元文科事務次官の前川は図らずも、その交わりにも出くわしている。
「私が文部科学審議官だった当時の文化庁長官人事でした。2015年から2016年の年明けにかけ、美術史学者の青柳正規さんが3月いっぱいで長官を退くので、後任を決めなければなりませんでした。で、私の案は文化行政を長くやってこられた河村潤子生涯学習政策局長(現・日本芸術文化振興会理事長)。内部の女性登用案で、馳大臣も了解し、杉田(和博)官房副長官も、『女性、いいじゃないか』と喜んでいたんです」
ところが、そこに待ったがかかった。菅による官邸得意の差し戻し人事だ。前川がこうも話した。
「菅官房長官に私の案があがり、しばらくすると、別の人間を考えろ、となった。その菅さんの意中の人が宮田さんだったわけです。菅さんはしょっちゅう宮田さんと食事をするような間柄だと聞いていましたから、さもありなんでした」
ただし、東京藝大はこのとき学長選挙を終えたばかりで、宮田が圧勝していた。2016年4月以降の学長続投が決まっていた。
「学長選挙が終わったばかりだから無理だと思っていましたが、仮にも菅人事だから、長官の打診はしました。宮田さんは断わるだろうと思っていたんです。しかし、『お引き受けします』と了承するではないですか」(同前)
菅との間で話がついていたのかもしれない。だが、そうなると、今度は東京藝大の次期学長が問題だ。藝大では伝統的に美術学部と音楽学部との学長争いがあるが、後継学長選びは宮田がした、と前川が続ける。
「学長予定者が突然いなくなるから、学内は大変だったでしょう。そこで宮田さんは、学長選で次点だった音楽学部の澤さんを後継指名したのです。音楽学部は歓迎でしょうが、(宮田の出身である)美術学部からは反対が出そうなもの。そこは政治力のある宮田さん、再選挙をやらずに簡単に澤さんに決まりました」
選出に至るトライアングル
後継指名された澤は、学長の椅子が転がり込んできたことになる。そこから文化庁長官という行政のトップに就いた宮田と新学長の澤ラインができあがったという。では、宮田と菅、ぐるなびの滝のトライアングルはどうやってできあがったのか。
「滝が菅と宮田の接着役を果たしていると思います。もともと滝はパブリックアートで宮田と関係を深め、政界で力をつけてきた菅官房長官を宮田に紹介したのでしょう」
そう推測するのは、あるぐるなび関係者だ。実際、菅、滝、宮田はこの10年来、かなり濃密な付き合いをしている。3人の関係を時系列に追っていくと、よくわかる。