1%フォー・アートとは公共建築費の1%を芸術分野に支出しようという提案だ。滝が考案したものではなく、欧米で一般化されているが、この運動もまた文化功労者選出を後押ししている。
交通文化協会では、パブリックアートの振興目的と称し、国際瀧冨士美術賞を設けてきた。文化庁長官になったあともずっと宮田が賞の審査員を務めてきた。宮田は賞の授賞式にも参加し、そこに東京藝大の澤学長が駆け付けてヴァイオリンを演奏して花を添える。そんなパターンだ。
法改正のあと、滝は東京藝大とお茶の水女子大に10億円ずつ寄付し、大学が国際交流施設を建てる。お茶の水女子大の施設には宮田の彫刻が置かれ、2019年の施設竣工式ではここでも澤がヴァイオリン演奏を披露している。
澤は東京藝大でアーツ・ミートサイエンスなるプロジェクトを立ち上げて昨年9月、滝を運営委員に加えている。文化功労者選出のメンバーとなったあとのことだ。
蜜月関係のキーマンとなった宮田に聞くと、文化庁を通じて「文化功労者の選考については、外部有識者で構成される分科会における審議を踏まえて、適切に選考されているものと承知している」と回答した。
だが、それを額面通りに受け取れない。菅、滝、宮田はまさに蜜月というほかない。人事を操ることで国家を私物化してきた弊害が、今まさに露呈している。
【プロフィール】
森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ―「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』『菅義偉の正体』。
※週刊ポスト2021年3月19・26日号