ビジネス

タクシー配車アプリ 若手ドライバーに恩恵もベテランは違和感

2020年春、新型コロナウイルス感染拡大の影響で閑散とした歓楽街では客待ちのタクシーが行列を作っていた(時事通信フォト)

2020年春、新型コロナウイルス感染拡大の影響で閑散とした歓楽街では客待ちのタクシーが行列を作っていた(時事通信フォト)

 タクシー運転手といえば、地理や抜け道に詳しいベテランが多く働く仕事というイメージがあるが、この一年ほどでがらりと様子が変わっているらしい。配車アプリへの対応をめぐり、ドライバーたちに迫られている変化について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 乗車していたタクシーが交差点に差し掛かり、左折するためにウインカーを出した瞬間、対向車線からやってきたタクシーが勢いよく右折した。右折したタクシーがこちらのタクシーの前に滑り込むよう割り込んできたため、慌ててブレーキが踏まれた。

「あれは新人ドライバーだよ。ベテランはあんな危険なことしない」

 千葉県某市の繁華街を拠点に、20年近いキャリアを持つタクシードライバーの宮本昭三さん(仮名・60代)が落ち着いた手つきでハンドルを握りながらため息をつく。

 コロナ禍以来の不景気により、職にあぶれた若者たちが、タクシー会社に押し寄せている、という話は聞いていた。タクシー会社も決して景気が良いわけではなく、人員を大幅にカットしたり、会社自体を整理してしまう例も珍しく無くなっているが、宮本さんの所属する会社でも、主に40代までの新入社員が十数人も増えた。

「要は年寄りを追い出そうってわけですよ。若手の方が給料も安いし、会社の言うことも聞くから。最近は変な機械を入れてね、それで客を拾いやすくなるから使えと言われるけど、私らは経験と勘で客は拾えるという自信はあるから。会社は信じてくれないね。機械頼りの若い奴らばかりが現場に出て、年寄りは出番を減らされている」(宮本さん)

 宮本さんがいう「変な機械」とは、若い従業員が乗車しているタクシーに取り付けられた、タクシー乗車アプリの受信装置の事。スマホに入れたアプリでタクシーを簡単に呼べ、乗車地を電話で説明する手間、そしてクレジットカードで事前決済なので降車時の支払いの手間も省ける。筆者もかなり利用しているのだが、宮本さんはそれが気に食わない。

「今日は3月の何周目の週末だから、とか、今日はこの辺りでイベントをやっている、地元の農協の大きな会合があって、その後どこどこの店で飲み会があるからとかの情報を集めたり、長年の経験と勘を働かせて客が拾えそうだとドライバーが集まる。今は機械がピコンと鳴って客を拾いに行く。なんでもかんでも機械様に指示を受けるってのは、なんとも気持ち悪いね」(宮本さん)

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン