コロナ以前は、深夜、銀座の通りには客待ちするタクシーの行列が恒例だった(イメージ、時事通信フォト)

コロナ以前は、深夜、銀座の通りには客待ちするタクシーの行列が恒例だった(イメージ、時事通信フォト)

 新しいテクノロジーが雨後の筍のように林立し、さまざまな現場に採用されることで、仕事の効率が上がる。それ自体はいいことのはずだが、頭ではわかっていても、どうにも受け付けられない。そんな経験は誰にもあるはずだが、宮本さんもそんな一人だ。

 コロナ禍以降、仕事がゼロになり、昨年の夏頃からタクシー運転手を始めたという都内在住の元カメラマン・榊祐一郎さん(仮名・30代)は、宮本さんが忌み嫌う「新たなテクノロジー」の恩恵に預かり、仕事を続けている。

「貯金もなく仕事もなく、どうしようかと思っていたところに見つけたのがタクシー会社の求人でした。支度金として30万円の現金支給が受けられることもあり、迷う暇はないと入社を決めました」(榊さん)

 榊さんが乗車するタクシーには、タクシーアプリの受信装置が取り付けられている。走行中、近くに客がいれば受信装置がなり、ボタンを押せば配車が確定するのだが、タクシーが複数台いる場合には客の取り合いになる。だから、受信音がなればいち早くボタンを押すよう、心掛けている。

「入社直後には装置のない、普通のタクシーに乗っていました。駅のタクシープールに並んだり、無線で配車をまったりするのですが、丸坊主(客がゼロ)に近い日もありました。また、昔からの習わしというか、ここは別のタクシー会社のテリトリーだとか、いろんなローカルルールがあり、ドライバー同士でも揉めることもある」(榊さん)

 アプリ導入後、こうしたトラブルがほぼ無くなっただけでなく、客もコンスタントに取ることができるようになった。

「アプリを使わない、もしくは拒否をしているベテランの方々はコロナの影響をもろに受けていて、売り上げが本来の半分以下なのに対し、アプリを使っている若い世代、新入社員はある程度の売り上げを確保できている。これが事実なのですが、会社でベテランさんに会うと嫌味を言われます。客を取る工夫をしなくて良い分、サービスに注力できるメリットはある」(榊さん)

 ピンチでも、自身の長年の経験と培った勘を信じ、これまで通りのスタンスを変えない宮本さん。コロナ禍によるピンチをきっかけに、新たな取り組みによって生き残りの術を模索する榊さん。その生き方は対照的で、どちらが正しいなどと簡単に言えるものではなく、どちらかが間違っていると非難されるべきものでもないが……。

「新たなテクノロジーとやらのおかげで、人間の仕事が取り上げられるっていうじゃない? 我々はまさに取り上げられた側なんだろうね。それ(新技術)がないと仕事をさせません、って言われたらまあ考えるのだろうけど。意固地になっていると笑われるかもしれないけど、この年になるとね。わかっちゃいるけど、ってやつですよ」(宮本さん)

 コロナ禍によって急速に進んだ新たな生活様式、そして新たな生活様式を支えるさまざまなテクノロジー。これによって生きやすくなったという人もいれば、生きづらくなったと感じる人もいる。どちらが正しく、どちらが間違っているという二元論ではなく、多様な生き方、多様な価値観があるという前提でなければ、こうした違和感は拭えず、自分の首を締め上げてしまうことになるのかもしれない。

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