東京高等裁判所で控訴審初公判が開かれた2019年9月26日、ハオさんは澁谷被告の写真を掲げてメディアの取材に応じた。

東京高等裁判所で控訴審初公判が開かれた2019年9月26日、ハオさんは澁谷被告の写真を掲げてメディアの取材に応じた。

 佐藤さんは事件が発生した年の夏には、ベトナムへ飛び、リンちゃんが眠る墓で手を合わせた。澁谷被告に極刑を求める署名活動では、ハオさんと一緒に街頭に立ち、署名を呼び掛けた。その集計も手伝った。グエンさんらがベトナムに一時帰省し、ハオさんが1人日本に残っている時のやるせない姿は、今も脳裏に焼き付いているという。

「正月におせちを持っていった時のことです。ハオさんは落ち着かないのか、食器を箸でカンカンと叩き、精神的にまいっている様子でした。やはりハオさんには家族がいないとダメだなと。正直、ベトナムに帰った方がいいのではと心配しましたが、友人としては日本に残って欲しいという相反する気持ちがありました。私もここまで応援してきた以上、今後も続けていこうと思います」

ベトナムにあるリンちゃんのお墓で祈りを捧げるハオさん。場所は首都ハノイから車で1時間半のフンイエン省で、筆者が2019年8月に撮影。

ベトナムにあるリンちゃんのお墓で祈りを捧げるハオさん。場所は首都ハノイから車で1時間半のフンイエン省で、筆者が2019年8月に撮影。

 リンちゃんの遺体遺棄現場となった千葉県我孫子市北新田の排水路脇には、ハオさんが組み立てた祠(ほこら)が建ち、リンちゃんが好きなピンク色に染まっている。中にはリンちゃんの遺影、ぬいぐるみや人形、ジュースやお菓子などが供えられている。ハオさんは毎月命日の24日にそこを訪れ、献花と焼香をする。

 お供え物はたまに取り替えられ、掃除も行き届いている。夜にはライトアップもされる。そうした祠の手入れはすべて、別の日本人支援者によるものだ。祠の隣には「リンちゃんが見られるように」と桜の木が植えられ、ぐんぐん成長してハオさんより高くなった。

 リンちゃんは生前、「花見をしよう。桜が散っちゃう」とグエンさんにせがんでいたというが、その希望を叶えてくれるかのように、今年もまた、桜の木が見頃を迎えた。

 控訴審判決言い渡し後の記者会見で「納得がいかない」と怒りを顕わにし、すでに最高裁への上告を希望する意思を示しているハオさん。その思いがリンちゃんに届く日は、果たして訪れるのだろうか。

取材・文/水谷竹秀(ノンフィクションライター)

リンちゃんの名前が彫られたプレート。この下にリンちゃんが眠っている。

リンちゃんの名前が彫られたプレート。この下にリンちゃんが眠っている。

リンちゃんの遺影が飾られた祭壇前に積み上げられた署名。これまでに紙で134万人、オンラインで4万人分が集まった。

リンちゃんの遺影が飾られた祭壇前に積み上げられた署名。これまでに紙で134万人、オンラインで4万人分が集まった。

祠の中に供えられた人形やぬいぐるみ、ジュースなどは定期的に支援者によって取り替えられている。

祠の中に供えられた人形やぬいぐるみ、ジュースなどは定期的に支援者によって取り替えられている。

 

関連記事

トピックス

映画『国宝』に出演する吉沢亮と横浜流星
『国宝』の吉沢亮&横浜流星、『あんぱん』の今田美桜&北村匠海、二宮和也、菊池風磨、ダイアン津田…山田美保子さんが振り返る2025年エンタメ界で輝いた人々 
女性セブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン