関戸の降板後、竹中勇登、川井泰志とつなぎ、5人目の投手としてマウンドに上がったのが別所孝亮。新2年生の彼の最速は147キロ。5番手に投げる選手の球速ではない。西谷監督が負け試合で5人の投手を起用したのも初めてならば、ベンチ入り18人のうち17人を使ったのも初めての経験だ。
文字通りの総力戦を強いられたこともまた、西谷監督の誤算だろう。
今年の大阪桐蔭の3年生には、2018年のU-15侍ジャパンに選出された5人がおり、2年生にも岐阜出身の別所や川井など、逸材が揃う。中学時代の“日本代表歴”がない選手を探すほうが難しいほどの選手層だ。私は春夏連覇を達成した根尾昂(中日ドラゴンズ)や藤原恭大(千葉ロッテ)ら最強世代に肉薄する実力を持った世代だと思っていたが、現主将である池田陵真や松浦慶斗もそう自覚して、春夏連覇を狙うと2年前の秋から語っていた。
智弁学園戦で5打数3安打を放った池田は、関戸が登板していた6回裏に自身の悪送球で失点し、点差を広げられてしまった。「甲子園でするプレーが、本当の自分の実力だと思います。初回の入り、ゲーム運びもぜんぜんまだまだ。すべてが実力不足でした」と話した。
宮城県石巻市で生まれ、震災後、北海道の旭川市で育ったエース番号を背負う松浦はこんな言葉を残した。
「北海道から大阪桐蔭に来る時、春夏連覇を考えていた。春にこうして負けて、夏、絶対に勝ってやる」
全国のライバル校がうらやむ戦力を抱えていても、歯車がひとつ狂えば、まるで機能を失ってしまう。優勝候補の筆頭格が、およそ1年半ぶりの甲子園から姿を消した。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)