今後の棋界をどう見る
50歳になった今もなお、次世代、そして、子どもほど年の離れた次々世代と戦う現役バリバリのプレイヤーだ。昨年度も、大台100度目の区切りのタイトル奪取を賭けて、竜王戦の挑戦者になっている(結果は、豊島将之竜王が防衛)。最近の羽生は一体どんな研究をしているのか。
「将棋には『その時、その時の流行』があるので、流行はつかもうとやっています。全部を真似して取り入れるわけではないです。けれど、トレンドは追ってとらえます。
いちばん感じることは、戦法感覚の見直しです。将棋には『角換わり』や『矢倉』や『相がかり』などいろいろな戦法があります。ですが、現代将棋では出だしでどの戦法なのかが、わかりづらくなっています。過去の“分類”の仕方が本当に正しかったのかどうか、というのが最近の将棋。これまでよりスピードが早くて、間口が広いのです」
そうなると、かつて羽生世代が開発した必殺戦法の「大部分は使えない」と羽生は笑う。
「だけど、部分的には使える。これは将棋に限らずどの世界でも同じだと思っているんですけれども。日進月歩で変化しています。そういう意味では非常に大変な時代という感覚がありますね(笑い)」
9×9=81マスで繰り広げられる宇宙の棋理を追求してきた彼は、今の夢を「全部わかったわけじゃないけれど、まあ、納得できた……となるのがひとつの大きな夢というか、目論見を持っています」と言った。“将棋の神様”とも言うべき存在だが、現在もその探究心は尽きない。
