芸能

芸歴60年の林家木久扇 あらゆる意味で「壊す人」が壊してきたもの

芸能生活60周年、傘寿を超えてもますます盛んな林家木久扇に密着

芸能生活60周年、傘寿を超えてもますます盛んな林家木久扇に密着

「ちょっと、扇子出して」──。インタビューが始まるなり、事務所のスタッフにそう声をかけた。

「扇子を持ってないと、しゃべるときにどうも調子がねぇ。もう、50年以上やっていますから」

 林家木久扇。人気番組『笑点』で黄色い着物を着ている人。そう、「キクちゃん」だ。サラリーマンや漫画家を経て、23歳で落語家になり、83歳になった。目下、芸能生活60周年記念公演を全国10か所以上で開催中だ。

「お調べになったらわかるけど、落語家は、ほとんど70代で死んじゃっていて、80代はそういないんです。ま、僕も百歳まではいかないと思うんですけど」

 32歳のときから人気番組『笑点』に出演し続け、立川談志や桂歌丸ら5人の司会者を見送った。

「談志さんは『笑点』を作り、落語家の地位を上げてくれました。歌丸さんは、最後、壮絶でしたねえ……。鼻に酸素チューブをつけながら高座に上がっていた。あの姿で怪談話をやられても、ご本人の方がよっぽど怖いんですから」

 落語には「守る人」「壊す人」「創る人」の3タイプがいると言われるが、木久扇は、あらゆる意味で「壊す人」だった。

 まず、落語。通常、真打になるには、100以上のネタを覚えなければならないと言われている。しかし、35歳で真打になったとき、木久扇は30も覚えていなかったという。

「だって、聞いていておもしろくないんだもの。実際に周りにいる人たちの方が、はるかにおもしろかった。僕は実録が好きなんです。話芸はね、つまらなかったらいけないと思っているんですよ」

 そうして出来上がったのが師匠の林家彦六らをおもしろおかしく語る『明るい選挙』や、片岡千恵蔵など歴代の名優たちが登場する『昭和芸能史』などのオリジナルの実録落語だ。いずれもモノマネ満載の木久扇ワールド。

 先日、明治座で開催された60周年記念公演初日の夜の部では、人気漫才師ナイツが爆笑をかっさらった後に登場。『明るい選挙』を熱演し、その笑いをさらに超えてきた。木久扇にしかできない至高の芸だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン