子育てに関しても、男手ひとつで苦労する五郎とは違い、すべて妻任せだったという。
「2人の娘を叱ったことがないというのは有名な話です。干渉は一切せず、相談にのったこともない。娘を前にすると照れてしまい、何もしゃべれなくなるそうです。ロケで家を空けることが多く、会話をする機会も少なかったでしょうけど、それでも親子の愛情はとても深かったと思う」(前出・芸能関係者)
長女はNHKに入局し、現在は広報局長を務めている。多忙な彼女も妹とともにリハビリ計画を立てるなど、父の晩年を支えていたという。
倉本さんは先の追悼文で、こうも綴っている。
《彼ほど純粋で真面目で無垢(むく)で、家族を愛した男を知らない。いや家族だけではない周囲全てをだ。彼はあたかも僧籍にいる人のようだった。更にもう少し彼を困らせてしまうつもりなら、敢(あ)えて“珍妙な天使”だったと云いたい》
ヒゲを蓄えた口を尖らせ独特な口調でしゃべる。眼光も鋭い邦衛さんの見た目は天使とは言い難い。だが、素顔の彼を知る人たちは、純粋で無垢で優しい彼に癒されてきた。いま頃、天国でも人懐っこい微笑みを浮かべているはずだ。
※女性セブン2021年4月22日号