国内

判決に「よっしゃ!」と叫ぶアポ電強盗犯 分断された社会の裏側

刑務所で地道な労働を学ぶのだが……(イメージ、法務省提供、時事通信フォト)

刑務所で地道な労働を学ぶのだが……(イメージ、法務省提供、時事通信フォト)

 法を犯して刑罰を受けた者が入る刑務所とは、刑を執行するという役割以外にも、改善と更生を行う場所でもある。更生の機能を果たしているのか、という問題は以前より指摘されてきたが、少なくともかつては、裁判で刑を言い渡されるときくらい本人は後悔と更生の意思を見せるのが普通だった。ところが、最近では様子が変わってきている。ライターの森鷹久氏が、特殊詐欺やアポ電強盗に手を染める若者たちの変質についてレポートする。

 * * *
 3月9日、ある事件の判決がくだされた。このとき、被告人がとった予想外の態度が新聞各紙などで報じられ、波紋を呼んだ。大手紙の司法記者が説明する。

「検察の求刑は無期懲役でしたが、判決は3人の被告にそれぞれ27~28年の懲役を言い渡すものでした。判決を聞くや否や、被告のうち一人が『よっしゃ!』と声を上げました。ご遺族だっていたかもしれないのに、あまりの不遜な態度に、傍聴人も裁判官も呆れ返っていました」(大手紙司法記者)

 彼らが裁かれたのは2019年2月に発生した、いわゆるアポ電強盗事件の実行犯としてだ。東京都江東区に住む80才の女性宅に強盗目的で押し入り、女性を死亡させたとして強盗致死罪に問われた。事前にターゲットの資産状況などを確認した上で強盗に入る「アポ電強盗」で初めて死者が出た事件として、事件発生当時はメディアも大きく取り上げた。

 検察の求刑通り「無期懲役」の判決が下されるという見方は「強くなかった」(大手紙司法記者)というが、27~28年という長期だが有期刑判決が下ったことに、被告が「よっしゃ!」の声を上げたのかと思うと、やるせなさしか残らない。

「被告らは3人組で犯行に及び、裁判の争点は殺意があったかどうかに絞られていました。検察側は、被害者の首を締め窒息死させ明確な殺意があったと主張、被告側は被害者の手足を縛ったが、口に貼った粘着テープは呼吸できるようずらして貼ったと、殺意を否定しました」(前出の大手紙司法記者)

 筆者はこの被告ら3人を含め、アポ電強盗や特殊詐欺に関わった人々の取材を重ねてきた。大抵の被告は「反省するもの」だと思い込んでいたのだが、この2~3年で明らかに変化したことがあると感じている。それは、犯行側に覚悟も決意もなく「逮捕されても儲けた方が得」と考え、極めて安易に犯行に及ぶ事例が増えていることだ。前述の、判決で求刑より軽くなったことを喜び「よっしゃ!」と叫ぶような人間が、珍しくなくなっているのだ。

「逮捕されても、被害者への謝罪どころか、刑期はどれくらいか、どうすれば罪が軽くなるか、そんな話ばかり。昔は更生したい、まともに働きたいという涙を流す人間がある程度いたのですが」

 こう証言するのは、自身もかつて特殊詐欺グループに参画し、検挙された経験を持つ会社経営者の吉野治樹氏(仮名・40代)。広域指定暴力団の組員だったこともあり、知り合いづてで、詐欺で逮捕された若者の社会復帰支援を行っているが、接見に行っても、また懲役を終えて出てきても、反省の態度を示す人間がほとんどいなくなってしまったという。

「なぜ犯行に至ったかを聞いても、仕事がなかった、金がなかったとは言いますが、それほど追い込まれている様子ではない。若い奴は実家暮らしで飯も布団もあるし、選ばなければあるはずの仕事も『だるい』とか『きつい』とかでやらない。根っからの犯罪者という人間はいないはずなのですが、最近は本当にそういう人がいるのではと思うほどです」(吉野氏)

関連記事

トピックス

インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン