ただし、入学と留学のタイミングでは、A氏から「入学祝い」として半期の授業料に相当する45万3000円を、さらに「留学に際して預金残高が必要だった」という理由で200万円を受け取っていたことを小室氏は明らかにした。A氏がそれらを「入学金」「授業料」「留学費用」と思い込んでいた、もしくは記憶違いでそう語った可能性は十分ある。それらの金銭についてA氏は後に「返してもらうつもりはなかった」と小室氏と佳代さんに話し、その会話は録音もされていることが文書で明かされている。「借金を踏み倒した」と非難された問題については、小室氏が言うようにA氏の主張は正確ではなく、返済を求めない意向も示していたと思われるから、その点では、これまでの世間の認識は間違っていた可能性が高そうだ。
しかし一方で、少なくとも245万3000円をA氏から受け取ったままになっていることについては別の疑問が残る。それは後述する。
【2】『週刊現代』記者とA氏の不可思議な関係
今回の文書で初めて明らかになった事実としては、これが一番、目を見張るものかもしれない。今回の文書では、いわゆる「金銭トラブル」が明らかになったのちに、小室氏と佳代さんがA氏と問題解決の交渉をした経緯が詳しく明かされているが、2019年1月に弁護士を通じてA氏に話し合いを申し入れてから、2020年11月と12月に『週刊現代』がA氏の告白を掲載して交渉が決裂するまでの間、交渉の多くは弁護士と『週刊現代』の記者B氏との間で進められていたというのである。
弁護士以外が法律問題の「代理人」になることは弁護士法で禁じられているため、A氏もB氏も、その立場はあくまで「窓口」にすぎないと説明していたようだが、一般市民の民事上のトラブルの交渉窓口を週刊誌記者が務めるというのは異様な光景である。文書で明らかにされた範囲では、弁護士がA氏に直接面談できたのは交渉初期の2019年7月と8月の2回だけであり、その後は弁護士はB氏から間接的にA氏の意向を伝えられるだけの関係になり、文書には〈元婚約者の方から記者を通じて〉というフレーズが続く。
たとえB氏が真摯にメッセンジャーを務めるよう努力したとしても、これではA氏と小室氏側が正確に意思疎通できたとは思えない。それどころか、A氏側からB氏を通じて弁護士に伝えてきた内容には、問題解決への話し合いが全く進まないのに、その経緯を世間に公表したいという要求まであったという。
〈令和元年(2019年)9月26日に元婚約者の方と面談する予定になりましたが、当日会うことができたのは記者だけで、上記の3(※編集部注=話し合い内容を途中で公にしないよう小室氏側から申し入れたこと)については応じるつもりはないという元婚約者の方からの回答が書かれた文書が、記者から手渡されたにとどまりました。
元婚約者の方が書かれた文書によると、その理由は、話し合いの進捗や内容を秘密にするのではなく、むしろ定期的に正確な情報を公開した方がいたずらに事態をゆがめたり煽ったりするような報道を減ずることになると思う、個人的な問題なので公にすべきではないという考え方も理解はするが、既に国民的な関心事となってしまった本件については国民に対しても誠実に事の経緯を公表する方がお2人の結婚にも近づくと思う、と考えているからだということでした。〉