芸能

追悼・田中邦衛さん 唯一無二だった「不器用で憎めない人間くささ」

シリーズのスタート

『北の国から』シリーズも記念すべきスタート。あどけなさが残る純と螢をみる顔つきは父そのもの

 映画『若大将』シリーズやドラマ『北の国から』で人気を博し、日本を代表する名優であった田中邦衛さんが、この世を去った。約65年間もの役者人生で残した数々の作品では、時にバイプレーヤーとして、時に主演として映画・テレビ史に刻む名演技を魅せてくれた。役に入り込む演技力とともにそこには“人のよさ”があふれていた。

「彼ほど純粋で真面目で無垢で、家族を愛した男を知らない。いや、周囲全てをだ」──1981年にスタートしたドラマ『北の国から』を描いた脚本家の倉本聰さんは、田中邦衛をこう偲んだ。田中さんが演じた不器用だけど真摯に子供たちと向き合う父親・黒板五郎は「彼の育った昭和という時代の、いつくしみ、思いやり、倫理道徳の中で、それをかたくなに貫いて生きた絶滅珍種の漢だった」と振り返る。

 1957年に映画『純愛物語』でデビュー。俳優を始める以前、中学の代用教員を務めていた異色の経歴を持つ。そんな彼を俳優としてスターに押し上げたのが、加山雄三主演の青春映画『若大将シリーズ』(1961~1971年)。

 主演のライバル“青大将・石山新次郎”役でアクの強いキャラクターを好演。キザなドラ息子という役ながら、どこかお人好しな青大将は若大将を引き立てつつも、“主役キラー”といわれるまで人気を得た。共演した加山は「信じられない。今は何も言葉にならない。寂しいよ本当に寂しい」と盟友に惜別のメッセージを寄せた。

 名バイプレーヤーとして活躍していた田中さんだが、そのイメージを一新させたのが映画『仁義なき戦い』(1973~1974年)。菅原文太さんや梅宮辰夫さんなど銀幕スターたちの中で、“仁義なしの卑怯者”役で独特の存在感を示す。

 転機となったのが約20年にわたって放送された『北の国から』シリーズ(1981~2002年)。真面目で不器用で底抜けの愛情をもって生きる黒板五郎という男は、前出・倉本さんの話す通り“田中さんそのもの”だった。“黒板家の子供”として20年を生きた中嶋朋子と吉岡秀隆は、「天国でもたくさんの人を幸せにしてくださいね」(中嶋)、「自分の覚悟の小ささとあなたの大きな優しさに涙しかありません」(吉岡)と“父”の死を悼む。

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン