芸能

『珈琲いかがでしょう』の中村倫也は余人をもって代えがたい存在

奇跡のブレークを果たした中村

重層的な演技を見せる中村倫也

 役者という仕事の難しさと同時に醍醐味を感じさせる出来となりそうな気配である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がテレビ東京の注目ドラマについて分析した。

 * * *
「35歳の女優なんて他にもいる。じゃあ自分が仕事をする意味って何だろう」

 子育てで仕事をセーブ中の市川由衣さんが、女優を続ける理由についていろいろ悩んだ、と語る記事を見かけました。もともと何の保証もない仕事だけに、後ろ向きになってしまった時期もあった、と正直に言っていました。

 たしかに役者の仕事なんて何の保証もない。「自分の代わりはどこにでもいる」と思ったとたん、不安の沼にはまる。この自問に対して、どこまで抵抗できるのか。いったいどんな自信を持てば、不安を突破できるのか。

 そもそも、その人にしかできない演技なんて、あるのだろうか--と次々に湧いてくる疑問。その回答といえるようなドラマがあります。4月5日スタートの『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系月曜午後11時06分)。主演男優がまさしく「余人をもって代えがたい」存在であることを示しているドラマ。ちなみにテレ東の見逃し配信でも196万再生と過去最高の数字を記録したばかり。

 主人公の青山一を演じているのは、中村倫也さん。舞台である「タコ珈琲」は8種類のブレンドを出す移動珈琲店で、街から街へと移っては淹れ立ての美味しい珈琲を人々に提供していく。心を癒やすような香りと味。優しくホッとできる憩いの場になる珈琲屋。

 中村さんの風情に目が引き寄せられます。コーヒー豆を丁寧に挽き、ひとしずくずつ愛おしそうに淹れていく所作。指先から首の傾き加減まで、見とれとしまう。

 体温の低そうなキャラから発せられる独特の声も、また沁みる。感情を抑えてちょっと鼻にかかっていて、決して押しつけがましくなく緩急を含んだ声。それは不思議な吸引力を持っていて、つい悩んでいることや自分の身の上を話してしまいたくなる。

 店主の青山はさまざまなお客たちの感情を、コーヒーと引き替えに受け取って、その人の人生に何らかの影響を残してまた去っていく。

「話をさせる力」「受け止める力」が超高い青山という人物ですが、しかし彼自身はつかみどころがなくてどこか謎めいている。

 という役をやれるのは、もう中村倫也以外にいない。ドラマを見ながら何度もそう実感させられてしまう。まさに「余人をもって代えがたい」ということを。

 中村さん自身は原作のコナリミサトの漫画が好きだったそうですが、過度に役に似せようと意識しているわけではないようです。その一方で、「僕以外の役者が演じていたら何よりもまず僕が文句を言っていたと思うので、良かったなと思います」と自信をのぞかせる。

 また、自分が青山に共感する点として「相手の自己肯定感を高める言葉が多いんですよね。それはきっと、彼の人生でいろんなことがあって、出会いや葛藤の末にたどり着いた言葉なんだと思います」 (「オリコンニュース」 2021年3月29日)と語っています。

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン