あえて女性視聴者の反感を買うことで、存在感を示した女優もいる。
『東京ラブストーリー』(1991年、フジテレビ系)で、奔放で純粋な赤名リカ(鈴木保奈美)から永尾完治(織田裕二)を奪う関口さとみを演じた有森也実だ。あまりに真に迫る“嫌な女”ぶりで、視聴者からカミソリ入りのファンレターまで届いたという。本人はインタビューで、〈当時は友達から“也実の顔がこんなに憎たらしいとは思わなかった”と、わざわざ電話もありました〉(『週刊女性』2020年5月5日号)と答えている。
「カンチが恋人のリカのところに行こうとしていたら、おでんを持った有森さんが突然現われる。リカのところに行けなくするんです。このシーンに全国の女子が怒り狂った。『熱々のおでん持ってくんじゃねーよっ、その場で食わなきゃなんねぇだろっ』って(笑)」(荻野氏)
『ポケベルが鳴らなくて』(1993年、日本テレビ系)で、友人の父と不倫関係になる主人公・保坂育未を演じたのは裕木奈江だ。雨でずぶぬれになりながら妻子ある男を2時間待ち、清純そうな潤んだ瞳で「キスして……、風邪うつすから」なんて言われたら、中年男性は撃沈だが、女性視聴者からは“女の敵”として激しく反感を買った。
「上目遣いで見上げるあの仕草に男はヤられるんだけど、それをテレビで見ている女子は思わず歯ぎしりしてしまう(笑)。『この子ってホントにこういうことするんじゃないの』って気分にさせられる。つまり、演技力のある女優さんってことです」(荻野氏)
逆に、強烈な美しさに対し女性からの支持が強いとされるのが菜々緒だ。
「女性ファッション誌編集部での“女の戦い”を描いた『ファースト・クラス』(2014年、フジテレビ系)での腹黒コネ入社社員役など強い女を演じることが多く、そのイメージが定着して、もはや安心して見られるレベルではないでしょうか」(荻野氏)
作品との出会いで女優は変わる。妖しくも艶めかしい「悪女」に、次に転生するのはどの女優か。
※週刊ポスト2021年4月30日号