スポーツ

東京五輪が「変異ウイルスの災典」に… 海外メディアでは中止論続出

2024年への延期を提言したマシュー・ビンセント(写真/EPA=時事)

2024年への延期を提言したマシュー・ビンセント(写真/EPA=時事)

「このまま開催して本当にいいのだろうか。喜べるのだろうか」──3度目の緊急事態宣言が発出される中、東京五輪を目指すアスリートたちは悩み、苦しんでいる。ロンドン五輪フェンシング団体銀メダリストの三宅諒選手が語る。

「私たちにできることは大会に向けて準備すること以外にない。しかし、スポーツにとってオリンピックが全てではないということも全関係者が理解していると思います」

 三宅選手は昨年、東京五輪の1年延期が決まると、「結果でスポンサーさんにお返しができないのに、契約を継続してほしいというのはおこがましい」とスポンサー契約の一時停止を申し出て、ウーバーイーツのアルバイトなどで生活費を稼ぎながら今大会への出場を目指している。

「大会の有無がいまだ曖昧なことで、“なくなる大会に全力を注いでしまった”という喪失感を経験するのではないか、との恐怖感があります。ワクチンをアスリートに優先接種すべきという意見もあるが、それはすべきではない。医療従事者や高齢者の方々への接種で国が安定することで、日本代表は本当の意味で日本を代表して戦うことができると考えるからです」

 海外のアスリートからはすでに東京五輪への出場辞退や再延期を求める声が上がっている。五輪で4個の金メダルを獲得した英国のボート競技の英雄マシュー・ビンセントはツイッターで「2024年への延期」を提案し、男子ゴルフ世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(米国)は不参加を表明している。

 海外メディアの報道はもっとストレートだ。米紙ニューヨーク・タイムズ(4月12日付)は、「完全に中止にする決断を下すときが来たのかもしれない」と報じ、英紙タイムズも「中止する時が来た」と題するコラム(3月3日付)を掲載した。

 国際医療福祉大学病院予防医学センターの一石英一郎・教授は「各国が五輪開催を心配するのは当然です」と指摘する。

「IOCは各国の選手団や大会関係者の参加人数を削減すると発表したが、それでも6万人程度の関係者の来日が見込まれている。それだけ来日すれば、様々な変異ウイルスが東京に持ち込まれるリスクは否定できない。平和の祭典のはずの東京五輪が、“変異ウイルスの災典”になりかねない」

 三宅選手に開催による感染拡大のリスクが指摘されていることを問うと、内心の葛藤を絞り出すようにこう答えた。

「もし、アスリート自体が感染拡大に関わってしまったら取り返しがつかないし、責任の取りようもない事態になると感じています」

※週刊ポスト2021年5月7・14日号

太田雄貴(右)とともに団体銀メダルを獲得した三宅選手(時事通信フォト)

太田雄貴(右)とともに団体銀メダルを獲得した三宅選手(時事通信フォト)

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン