「コーヒーなどカフェインの多い飲み物は、覚醒作用があるため、気分を落ち着かせる効果のある抗うつ薬や抗不安薬を服用中に摂取すると効果を弱める可能性があるなど、薬との相性はよくないことがあるため、気をつけてほしい」(鎌田さん)
いまだに国内で毎年2000人の死者を出す結核の治療薬である抗結核薬はまぐろとの組み合わせが悪い。長澤さんが言う。
「まぐろに含まれるアミノ酸は、酵素の働きによって体内でアレルギーや中毒症状を引き起こす『ヒスタミン』に変化します。一方、抗結核薬にはヒスタミンの代謝を阻害する作用があり、同時に口にすると発汗や嘔吐などの中毒症状が出ることがあります」
薬1粒につき水100mL
薬の効果を100%享受するために、食品をどう選ぶべきなのか。三上さんは、「そもそも薬ののみ方を間違えているケースも多い」と話す。
「錠剤やカプセルをのむときに、水を一口でのみ込んで終わる人もいますが、錠剤1粒につき、水100mLは飲んでほしい。飲む水の量が少なければ薬が喉に引っかかっていることもあるし、胃壁に薬がくっついて荒れることもあります」(三上さん)
薬をのむタイミングを正しく把握することも大事だ。
「『食後』と指定されていても、空腹時にのんでも問題ない薬はたくさんあります。例えば花粉症の薬は空腹時でも大丈夫。薬をゆっくり吸収させるために食後と指定されている薬もあれば、鎮痛剤や抗生物質のように空腹だと胃に悪い薬もあります。指定どおりにのむのが難しいときは、医師や薬剤師に相談してください」(三上さん)
のみ合わせやタイミングについては、処方薬であれば薬局での服薬指導の際に確認しておきたい。市販薬に関しても、事前に問い合わせておくようにしよう。
「かかりつけの病院がある人は、診察時に聞いてもいいし、外出がしづらい場合は普段から利用している調剤薬局に問い合わせることもできます。調剤薬局だと相談料もかかりませんし、24時間問い合わせ可能な薬局も増えています。インターネットなどで市販薬を購入する際は、ホームページに問い合わせ先が記載されている。電話で尋ねてみるといいでしょう」(三上さん)
薬によって飲食物の影響は異なるため、鎌田さんは新しい薬をのむときは問題のある組み合わせを確認してほしいとアドバイスする。
「ワルファリンと納豆のように、のめば命の危険が生じる組み合わせもあります。他方、効果が多少下がるだけなら、気にしすぎなくてもいいことがある。例えば、以前は貧血の治療に使われる錠剤と緑茶の組み合わせは効果が落ちるといわれていましたが、現在は特に問題ないとされている。組み合わせで悩んだら、薬剤師や医師に相談を」(鎌田さん)
薬と食品の力を最大限取り入れるために、まずは知ることから始めよう。
【市販薬×食べ物・飲み物「やってはいけない」組み合わせ】
・胃腸薬×肉類
肉が含有するリン酸が制酸剤の成分と結合し、薬の効能を弱める。胃腸薬をのむ場合は制酸剤ではなく、健胃剤か消化剤を選ぶべし。
・胃腸薬×オレンジジュース
制酸剤が含有する炭酸水素ナトリウムは酸性の液体と混じり合うと二酸化炭素が発生し、気分障害の原因に。薬の効きも悪くなる。