スポーツ

NHKマイルC 皐月賞をパスしたシュネルマイスターには「負けられない舞台」

東京競馬場

東京競馬場1600mは底力が問われる

 競走馬の適性を早い段階で見抜くことはプロフェッショナルなホースマンたちにとっても簡単ではない。誰もが夢見る3歳クラシック「ではない」ほうのGIレース、競馬ライターの東田和美氏が考察した。

 * * *
 創設当時はマル外の独壇場だったこのレースも、クラシックが外国産馬に開放された2002年以降は、マイル路線を目指す3歳馬のチャンピオン決定戦となるはずだった。しかし、勝ち馬が古馬になってから安田記念やマイルCSを勝ちまくったかというとそうでもない。

 そもそもこの後GⅠを勝ったのは4頭だけで、うち2頭はダービーに駒を進めたキングカメハメハとディープスカイ。古馬になってマイルGⅠを勝ったのはマイルCSのミッキーアイルと香港マイルのアドマイヤマーズだけ。2002年以降の勝ち馬のうち8頭は、その後1つも勝てていない。

 春秋の古馬マイルGⅠ馬で、3歳時にこのレースに出走していたのはのべ8頭いるが、ミッキーアイル以外はリアルインパクトの3着が最高。しかもこの中にはアグネスデジタルやジャスタウェイといった万能型もいるので、3歳時にマイル路線を歩んだことが、その後の“馬生”にプラスになったとはいいきれない。

 一方皐月賞馬ダイワメジャーは古馬になってからマイルGⅠを3勝しているし、ロゴタイプも安田記念を勝っている。マイル路線へシフトするのはクラシックを走りきってからでも遅くない

 陣営としては中山2000mより、東京マイルのGⅠを勝った方が種牡馬としての価値があるという意識こそあるが、3歳春時点ではまだまだクラシックにこだわりたいのだ。馬主、牧場やクラブ会員などの思いも同じだろう。

 マイルに慣れることで、その後の調整が難しくなることも多いと聞くし、3歳になったばかりの若駒の可能性を限定したくないという思いもある。2016年のアーリントンカップを勝ったレインボーラインは、皐月賞には向かわずこのレースに出走。3着に健闘したが、古馬になってからは長距離適性を発揮するようになり、2018年には天皇賞(春)を勝った。また、ここで1着ではなかったキンシャサノキセキ、ローレルゲレイロなどはスプリンターとして頂点に立っている。3歳春に言われる「適性」は、あくまでもこの時点での「居場所」と考えたほうがいいのではないか。

 2002年以降の勝ち馬19頭のうち、この時期に純然とマイル路線を目指したのはロジック、ミッキーアイル、昨年のラウダシオンら6頭ほど。他の3歳馬にとって本来の目標はクラシックだった。キングカメハメハ、ディープスカイの他、前日に出走取消となったダノンシャンティなどはダービーを見据えていたし、グランプリボスやマイネルホウオウはスプリングSの結果を踏まえて皐月賞を回避。メジャーエンブレムやアエロリットは桜花賞から、クラリティスカイやアドマイヤマーズは皐月賞から巻き返した。

 シュネルマイスターは札幌の1500mで新馬勝ち、2走目の3歳1勝クラス1600mのひいらぎ賞は完勝、そしてクラシックの王道路線と言われる弥生賞で2着と、胸を張って皐月賞に向かえたはず。だが弥生賞で「勝ち馬との差を詰めきれなかったこと」(サンデーサラブレッドクラブHPより)で距離の壁を感じ、NHKマイルカップへの出走となった。

 サンデーレーシングはオーナーランキング4年連続トップだが、シュネルマイスターが回避したこともあって皐月賞への出走馬がいなくなってしまった。1歳馬募集のラインナップが発表になった時期に、クラシックへの出走馬がなかったのはこのクラブにしては由々しき事態。募集価格5000万円、2年前に125万円も出資した40人の会員すべてが。この決定をすんなり受け入れたとは思えない。

 しかも結果論とはいえ、弥生賞馬のタイトルホルダーは本番でも2着。素質と伸びしろを考えれば、シュネルマイスターとて、勝ち負けになったのではないかと考えてしまうのも無理はない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン