工房内には無数の靴型が所狭しと置かれていた

工房内には無数の木型が所狭しと置かれていた

「まずは木型をもとに革を縫っていけるようにしましょう。最初は、木型にマスキングテープを貼って、型紙を作るところから始めます」

 木型に3枚のテープを貼り、立体を平面にする作業を行う。なるべくシワを作らず、無駄なく効率的にテープを貼らなくてはいけない。優一氏は難なく貼っていたが、いざ自分が貼ろうとすると、テープの角度や重ね方、長さなど細かい部分で何度もまごついてしまった。

 それでも3回ほど繰り返していると、少しはサマになってきた。

「いいですね、上手くなってますよ!」

 一区切りついたところで、近くのレストランで一緒にランチに行った。

苦笑いの「ランチ」

 優一氏はカツカレー、私はハンバーグを注文した。

「あ、すみません、手止めちゃって。注文いいですか?」

 私の前だからかもしれないが、優一氏は店員さんの前でも極めて物腰が穏やかで、口調も丁寧だった。料理が到着すると、優一氏はいつの間にか箸袋を畳んで箸置きを作っていた。

 通常の取材だと、“次は何を質問しよう”、“こんなことを聞いたら気を悪くするかな”など、頭をフル回転させて会話に臨むが、この日はあくまで師匠と弟子の関係。むしろ、弟子が師匠に向かってアレコレ質問するのは不自然なので、黙々と料理を口に運んだ。

 私が大してしゃべらずにいると、優一氏が時々話しかけてくれた。

「うちにいらした時って、取材の目星を付けてから来られたんですか?」

 前回のインタビュー取材を申し込む際、私は優一氏を自宅で直撃していた。

「そうですね。ピンポンするのが良いか、家から出てくるのをじっと待つほうが良いか、結構迷うものなんですよね」

「どっちも嫌だなあ……」

「いやあ、申し訳ないです」

 お互い、苦笑いするばかりだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン