国際情報

「ワクチン打ったらアイドルに会える」接種加速する中国のニンジン作戦

(写真/AFP=時事)

世界トップクラスの速さでワクチン接種を加速させる中国(写真/AFP=時事)

 予約システムの欠陥や電話がつながらないなど、ワクチン接種をめぐりさまざまな混乱が続き、世界に大きく後れを取る日本。一方、中国ではコロナの蔓延がほぼ収束し、ワクチンの接種も累計4億回を超え急速に進んでいる。安全性や有効性を懸念する声も多いなか、14億人もの人口を抱える中国は、なぜ接種ペースを加速できたのか。背景には、中国ならではの“作戦”があるようだ。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。

 * * *
「ワクチン? 私はいいや。昔から医者は嫌いだから」
「私は打たざるを得ないでしょう。職場が政府系ですし、中国共産党の党員なので、率先して見本になれと言われるに決まってます。仕方ないと諦めていますが、子どもには打たせないつもりです。」

 今年の2月ごろ、中国に住む友人とワクチンについて雑談していると、こんな消極派の意見が目立った。

 新型コロナウイルスの流行を見事に抑え込んだ中国政府。表向きは「政府万歳」と叫びつつも、裏ではこきおろしまくりというのが中国人民のスタンダードだが、日本やアメリカ、イギリスなどの「西側先進国」の惨憺たる状況を見聞きすると、辛口の人々も今回ばかりは「中国政府はよくやった」との意見が大勢らしい。それでもワクチンはどうも信じられないので、打ちたくないという人が多かった。

 まあ、その気持ちもわからないでもない。なにせ中国の新規感染者数は多くても1日10人あまり、感染者ゼロの日も多い。コロナの脅威なんぞさっぱり感じていないのだから、ワクチンを打つ必然性も感じないというわけだ。

 世界トップクラスの速さでワクチンの開発、量産に成功した中国だが、接種率をあげるのは大変だろう……などと思っていたのだが、どうやら大間違いだったようだ。

 中国国家衛生計画委員会は5月20日、記者会見を開いてワクチン接種状況について発表したが、19日に時点で接種回数は約4億5000万回に達しているという。接種ペースは加速しており、12日から19日までの8日間での接種回数は1億回を超えた。

 菅義偉首相は「1日100万回の接種を目指す」と発言したが、日本では実現はちょっと厳しいという声もある。ところが中国では、その10倍以上の接種回数をすでに実現し、なおも加速しているというわけだ。中国政府はどのようにして、嫌がる人民たちにワクチンを受け入れさせたのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン