日本の自動車メーカーが目指すべき道
では、これから日本の自動車メーカーが目指すべき道は何か? 大きく分ければ二つある。
一つはHVをさらに進化させることだ。普段は電動で走り、万一電欠になったら小さいガソリンエンジンで充電ステーションまでたどり着けるようにする。ガソリンエンジンをオートバイのリザーブ(予備)コックのような役割にするわけで、これが最も手っ取り早くて現実的な解決策だろう。
もう一つは、前述したNIOのような電池交換式である。ただ、電池交換式の最大の問題点は、メーカーや車種によって電池の形式や形状や容量が異なっていたら、交換ステーションの展開・拡大が難しいことだ。もともと電池交換式EVは、アメリカのベンチャー企業・ベタープレイスが開発し、かつて私はこれが“本命”だと書いたが、多少浸透したのはイスラエルだけで、結局、同社は破綻した。
NIOの場合、すでに専用の電池交換ステーションが中国国内に200か所あり、3分で交換できるという。だが、電池交換式を広く普及させるためには充電式ニッケル水素電池の単3や単4のようなEV電池の世界標準を作り、ガソリンスタンドや充電ステーション、広い駐車場があるコンビニエンスストアなどで簡単に交換できるようにしなければならないと思う。これがEV市場の今後15~20年の近未来予想図だ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『稼ぎ続ける力』(小学館新書)など著書多数。
※週刊ポスト2021年6月4日号