学校からは、家庭での使用時間は家で話し合うこと、就寝1時間前からは使わないこと、無関係なアプリはインストールしないこと、学習と関係ない写真や動画は記録しないことなどが約束として配布されている。つまり、そのようなことはすべて可能だが、管理しろということだろう。YouTubeやTikTokなどの動画共有サービスの利用は管理者によって制限されているが、一般的なサイトは見られる状態だ。
コロナ禍で、学校で行われるはずだった説明会は録画済みの動画配信となり、家庭向けアンケートにも生徒への宿題と同じようにGoogleクラスルームが利用された。紙で集めるよりも集計が楽なはずだが、すべての保護者が使えるのかについては少々心配になった。
制限回避してゲーム・YouTubeを見る子どもたち
鳴り物入りで始まったGIGAスクール構想だが、課題は山積みだ。まず学校におけるインターネット環境は非常に脆弱で、「大勢でつなぐと不安定になる、止まる」という実態がある。昨年度、筆者も学校対象にオンライン講演を提案したところ、「回線の関係で無理なので対面で」と言われたことがある。
もちろん、教員側の知識と経験不足は大きく、教員によって受けられる授業の質はかなり変わる。そもそも情報リテラシー教育を受けていない世代であり、拒否感を持つ教員もいる。教材として使いこなすには十分な知識や使いやすい教材などが必要だが、まだまだ足りていないようだ。
また、子供の利用をどのように管理するかについては課題が多い。使えるアプリや接続サイトを管理者が制限できるフィルタリングサービスなどを利用していても、子どもが抜け穴を探して利用する例は多数報告されている。
学校配布の端末では、配布前に使える機能をあらかじめ制限した状態で配布されていることが多い。それにも関わらず、許可されているアプリ経由なら禁止されていることもできてしまう例が少なくない。それが冒頭でご紹介した「裏技」につながっているというわけだ。
たとえば、ゲームは禁止と一律に制限をかけた端末でも、プログラミングアプリの中でユーザーが作ったゲームは遊べる。動画サービスの利用制限をかけても、別の利用が許可されているサービスの一機能を使ってYouTubeが見られる。こういった情報を子ども同士で交換し、遊んでいるのが実態だ。それに、検索すれば、制限をかいくぐってYouTubeを見る方法やゲームをする方法が多数公開されている。
また、低学年の生徒が持ち運ぶには重すぎるため、端末は学校に置いたままとなっていることが多い。その状態のまま、いざ教員が低学年に対してオンライン授業をしようとしても、家庭での端末やネット環境、保護者のリテラシーに差がありすぎて、説明を一から始めねばならず、実際に授業をするどころではなかったという。