──2010年には、44歳の若さで社長に就任する。
菊地:当時はリーマン・ショックの影響が残り、外食産業も低迷していました。ロイヤルHDも2期連続の赤字から立ち直る方策がなかなか定まらず、経営陣の間でも経営方針を巡って対立が起きました。2011年1月には社長を退いた会長が株主を巻き込んで取締役刷新の株主提案を突きつけ、「お家騒動」とも報じられた。
会社を立て直すため、現場と経営陣の間にできてしまった溝をなくすために何ができるか、社長になってから模索し続けました。
──具体的には?
菊地:最も重視したのは従業員が気持ちよく働ける環境づくりです。新規出店を抑え、その代わりに既存店を改修し、1店舗あたりに振り分ける資金と人員を増やした。不安はありましたが、結果的にはサービス品質が向上してお客様の満足度も客単価も上昇しました。
2000年代に入ってから同業他社は低価格路線に舵を切りましたが、ロイヤルホストは高付加価値路線を維持し、専門店の味を手軽に味わうことができるという「原点」に立ち返ることが奏功しました。
双日との資本業務提携
──しかしコロナ禍で、ロイヤルHDは苦境に陥っている。2020年12月期決算では売上高は前期比40%減の843億円、営業損益は前期の46億円の黒字から192億円の赤字に転落。最終赤字は過去最大の275億円となっています。
菊地:これまで当社では様々なM&Aを手掛けてきました。その結果、主要事業は大きく5つの柱に分かれています。
「ロイヤルホスト」や「てんや」などの外食事業、「リッチモンドホテル」などのホテル事業、当社グループの食品製造を行なう食品事業、空港や高速道路のレストラン、企業内や大規模施設などの食を請け負うコントラクト事業、そして機内食事業です。
外食以外の事業を増やしてきたのは、リスク分散することで最適なポートフォリオが組めると考えてきたからです。しかしコロナ禍では、この5つの事業がことごとくダメージを受けてしまった。パンデミックという想定外の出来事とはいえ、考え方が少し甘かったと痛感しています。
──復活へのプランは?
菊地:コロナが収束すれば売上が100%戻るのであれば問題は一時的です。しかし、テイクアウトやデリバリーなどの一般化で、戻ったとしても90%しか期待できないでしょう。
90%でも成り立つビジネスモデルに変えていくか、失われる10%の部分を新たな事業でカバーしていくか、道は2つしかない。私はどちらも早急に手を打つべきと考えています。
2月には、総合商社の双日さんとの資本業務提携を発表しました。コロナで棄損した財務基盤の再構築だけではなく、コロナ後の成長戦略を描くために、モノや情報を動かすことに強い双日さんと、コンテンツを持つ当社のシナジー効果を期待しています。