甘利氏は小さい声でそう言うと、憮然とした表情で車のドアを閉め、走り去った。政治ジャーナリストの藤本順一氏が語る。
「菅首相がコロナ対応で失敗を重ねているのは、経済重視で感染対策が中途半端な安倍路線を引き継いだからです。東京五輪も菅さんには思い入れはないが、自分を引き立ててくれた恩人の安倍前首相が五輪でレガシーを残したいから、安倍さんの意思を重んじて開催したいと考えている。
五輪も1億5000万円も赤木ファイルも安倍さんの尻ぬぐいだが、安倍さんを守るのは限界です。菅さんが国民に目を向けるなら、『全部、安倍のせいだ』と明らかにして安倍支配のダークサイドから脱却すべきです」
かつて「闇将軍」の田中角栄・元首相の力で首相に就任した中曽根康弘氏は「ボロ神輿」と呼ばれたが、“恩人”の田中氏を切ることでその支配から独立し、自前の政権をつくった。菅首相にそれほどの覚悟があるとは到底思えない。だが、安倍政権を支えた官房長官だった菅首相はその“汚れた部分”も知っていたわけであり、自らが“尻ぬぐい”をしなければならない可能性も分かっていたはずだ。
汚れを拭き取ったうえで、その汚れとともに去っていく──そんな身の処し方こそ、菅首相が評価される唯一の方法ではないだろうか。いずれにせよ今の「ボロ神輿」のままでは、五輪という“祭り”には似合わない。
※週刊ポスト2021年6月11日号