糖尿病には画期的な新薬が
高血圧と並んで多くの罹患者がおり、その数は2030年には世界で5億人を突破するといわれる糖尿病も、薬で症状が左右される病気の1つだ。
「糖尿病治療で最も一般的な『SU薬』はインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる薬ですが、その作用の強さゆえに食欲がなく食事量が減ってしまったときなどに低血糖を起こしたり、体調が悪くなることが少なくありませんでした。しかし、ここ数年で糖尿病のメカニズムの研究は大きく進み、新しい薬も増えているのです」(長澤さん)
糖尿病の専門医・有楽橋クリニック院長の林俊行さんは2021年から服用が開始された新薬に注目している。
「これまで注射剤しかなかった『GLP-1受容体作動薬』の内服薬が登場しました。この薬は血糖値を下げるだけでなく、体重の減少や脂肪肝の改善も期待できるため、目に見える効果が大きく、患者の治療へのモチベーションも上がります。注射に抵抗があった人や、自分で注射を打つのが困難だった人も使用できるようになり、選択の幅が広がりました」
この新薬も含めて、現在、糖尿病の主な内服薬は8種類。糖尿病の原因はインスリンを分泌する力が弱い、インスリンの働きが悪い、あるいはその両方など人によってさまざまなので、症状に合った薬を選ぶことが大切になる。
また、高齢者の場合は、認知症リスクや薬ののみ忘れにも警戒が必要だという。
「薬の副作用で低血糖を繰り返すことで、認知症の発症を誘発する可能性があります。高齢者や腎臓機能が低下している人の場合、低血糖を起こしやすいSU薬をなるべく減らす、ほかの薬剤に変更するなどの選択肢も視野に入れた方がいい。
また、糖尿病患者は血圧やコレステロールの薬も服用している割合が高く、内服薬が増えてしまいがち。種類が多くなるほどのみ忘れのリスクが高まりますが、なかには薬をのみ忘れて数値が悪化したことでさらに内服薬が増えてしまう悪循環に陥る人もいます。服用する薬を減らす、のむタイミングを揃えるなどの工夫も大切です」(林さん)