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医師としっかりコミュニケーションを取ることが大切(写真/Getty Images)

もの忘れ外来に気をつけろ

 薬ののみ忘れは糖尿病に限らない。日本調剤の調査によれば1か月以上同じ薬を処方された人のうち半数は、のみ忘れの経験があるという。

「のみ忘れを防止し、患者の負担を減らすため服用回数を減らすことができる薬も登場しています。たとえば骨粗しょう症の薬は毎日服用するタイプのもののほか、月1度で済む薬もあります」(長澤さん)

 こうした「もの忘れ」が頻繁に起きる認知症も、適切な薬を選び、体に合った使い方をすれば、その症状を最小限に留めることができる。 

 処方される薬は認知症の種類によって異なり、認知症全体の6割を占める「アルツハイマー型認知症」に使用されているのが、抗認知症薬と呼ばれる「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体拮抗薬」だ。

 前者は記憶力や学習能力に関係する神経伝達物質・アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑制することで、アセチルコリンを増やす。

 多くの認知症患者を診察してきたシニアメンタルクリニック日本橋人形町院長の井関栄三さんは、認知機能障害の程度に加えて、患者の性格によっても薬を使い分けることが重要だと語る。

「コリンエステラーゼ阻害薬には、『ドネペジル』と『ガランタミン』、貼り薬の『リバスチグミン』の3種類があります。最もよく使われるのがドネペジルで、記憶障害の進行を抑えるほか、注意力が高まる、意欲が出るといった効果も期待できる。ただし、もともと短気な性格の人が服用すると、その傾向に拍車をかけて怒りっぽくなったりすることがあり、一人ひとりの性格や傾向をみながら処方することが必要です」(井関さん)

 これらは認知症の初期にのむ薬で、進行すると「NMDA受容体拮抗薬」が追加されるか、単独で使用されることが多い。

「認知症は脳全体にかかわる病気であり、さまざまな要素が関連している。薬だけで目に見えて症状が改善するわけではありませんが、薬によって家族を困らせるような行動・心理症状を改善できることもある。私は抗認知症薬に加えて、抗不安薬や抗うつ薬、抗精神病薬など、複数の薬を少量ずつ合わせるなど、患者の年齢や症状によって使い分けています」(井関さん)

 つまり薬の特性をよく知り、かつ患者の状態をしっかり把握してくれる医師のもとで服用しなければ、症状は改善しづらいということ。

「近年は専門医でない医師が『もの忘れ外来』を標榜している場合も増えており、患者に合わない薬を間違って処方しているケースも見受けられます。もし症状が改善しないのであれば、病院のホームページなどで医師の経歴や所属している学会をチェックしてみてください」(井関さん)

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