S字カーブでも強い横Gがかからない
では、具体的なインプレッションに入っていこう。ドライブ前はAWDなのだから梅雨時のウェット路の安定性では有利かなという程度の認識だったのだが、実際に運転してみると恩恵は悪コンディション下での走行にとどまらなかった。
大衆車の一般的なAWDは前輪のグリップが失われると後輪に駆動力がかかりはじめるオンデマンド方式だが、ノートのデュアルモーターAWDは限られた条件以外は常時、4輪に駆動力を伝えるフルタイム方式。加速時だけでなく減速時のエネルギー回生も前後両方のモーターで行っていた。しかも電動式なので、駆動力の配分は前後電気モーターの出力の範囲内で自由自在である。
長野の安房峠を走る。電動AWDの走りの制御は素晴らしいものがあった
その威力を最初に実感したのは長野・松本から岐阜の高山、さらに福井に入って九頭竜湖を見ながら日本海の鯖江に抜けるという、中部山岳地帯を縦貫する長大なワインディングロードだった。
カーブに差しかかるとクルマはコーナーの外側に向かおうとするアンダーステアが発生する。そういう時には外へのふくらみを抑えるためにステアリングを切り増すのだが、ノートのAWDはアンダーステアが強まったと判断すると後輪に大きな駆動力をかけ、前後の駆動力の差でクルマの方向転換力をアシストするのだ。
安房峠への上り道。遠景に上高地の入り口にそびえる霞沢岳を望む
ハンドルを過度にこじらずとも軽快にカーブを曲がれるというのは、実に気分のいいものだった。山岳路をオンザレール感覚で走れるというのはもちろん最大のメリット。第3世代ノートは車体やサスペンションのスペックが旧型から大きく引き上げられているのでもちろん速さはあるのだが、タイヤのグリップ力で強引に曲がるという感じではなく、クルマの姿勢がいいという感じだった。
山岳路でのメリットはそればかりではない。S字カーブを通過するときもクルマが左右に振られる動きが小さいため、身体にガーンと強い横Gがかからないし、細かい揺り戻しに身構えなくてもいい。長大なワインディングルートではそんなクルマの動きの優しさが疲労の蓄積の少なさとなって表出した。
安房峠に続く山岳路の景観はダイナミック(県境は現在閉鎖中)