4輪制御技術「e-4ORCE」の先出しか

 デュアルモーターAWDの恩恵は高速道路でも発揮された。山陰道通過時は低気圧の接近で路面はウェットなうえ、風速10m/sを超える強い横風が吹き付けていたが、ノートAWDはそんなコンディションでも大変良好な直進性を示した。4輪を独立制御しているわけではないのだろうが、安定性抜群だったのは事実である。

デュアルモーターAWDの恩恵は高速道路でも発揮

デュアルモーターAWDの恩恵は高速道路でも発揮

 また、これはFWD(前輪駆動)モデルとその場で乗り比べたわけではないので違いは定かではないが、日産関係者の話によれば、発進時のスクワット(尻下がり)やブレーキ時のノーズダイブ(前が沈むこと)を抑制する制御も入っているとのこと。

 これらの制御のおかげであろうか、ノートAWDでの1500kmあまりのドライブの疲労は、過去に乗ったBセグメントサブコンパクトモデルの中では異例なほどに小さかった。

 日産は現在、電動SUVの新商品「アリア」を準備中である。アリアにはFWDとAWDがあるが、AWDは「e-4ORCE(イーフォース)」という4輪を自在にコントロールするタイプのものになるという。ノートのAWDはe-4ORCEではないが、その一部を先出ししたようなものに感じられた。

「充電要らずの電気自動車」の可能性

 ノートAWDでもうひとつ驚いたのは、加速性能である。前後の電気モーターの出力を合算すると135kW(184ps)もある。が、このパワーを実際に出せるわけではない。実際の出力はエンジン出力60kW(82ps)とバッテリー出力(不明)の合算値に制限される。

 一方で車両重量はFWDに比べて120kg重いので、動力性能面では不利と読んだのだが、GPSを用いた0-100km/h加速タイムの実測値は予想よりずっと速く、7.1秒であった。このタイムは純電気自動車「リーフ」のノーマルモデルと大容量・大出力バッテリー版「e+」の中間に位置するもの。Bセグメントでは一部の高性能モデルを除き、一番の俊足であろう。

e-POWER 4WDのエンブレム

e-POWER 4WDのエンブレム

 日産はe-POWERについて「充電の要らない電気自動車」と宣伝しているが、充電できない電動車はただのハイブリッドである。クルマに入れた燃料だけで完結するのであるから、あくまで省燃費技術として勘定すべきだ──というのが筆者の考えである。

 AWDのノートも基本的には同じ事なのだが、このデュアルモーターは電動化のもうひとつの特徴、すなわちクルマの運動制御の高度化についてポジティブなイメージを印象付けるのに十分な威力を持っていた。

 e-POWERは「エンジン+発電機」が主動力源だが、駆動は電気自動車そのもので、動力源を大型蓄電池に変えればバッテリー式EVになるし、燃料電池に変えればFCEV(燃料電池電気自動車)になる。ノートのデュアルモーターがそれらのクルマをよりエキサイティングなものにするための下敷きになるかと思うと、今後の技術展開が楽しみになった次第だった。

飛騨高山の集落にて

飛騨高山の集落にて

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン