「Vやねん!」のように、優勝を確実視するメディアの動きが重圧となったりはしなかったのか。岡田氏に聞くと、なんと「そういう本があったんか。それは知らんかったわ」と、今に至るまでその存在を知らなかったのである。
「まぁ、たしかに普通に戦っていれば優勝できるという考えやったけどね。オレ自身、この年のオフに退任した後、『頑固力 ブレないリーダー哲学』(角川SSC新書)という本を出したんやけど、途中まで優勝するつもりで書いてたんやから。本の企画が決まったのは夏前くらいやったかな。13ゲーム差もあったから、まさか逆転されるとは考えもせず、優勝するもんやと確信して書いていた。だから、最後の1章はシーズン終了後に慌てて書き直したんや(苦笑)」
2008年は、藤川球児、新井貴浩、そして現在の指揮官・矢野燿大という3人の主力が北京五輪で戦列を離れたところから失速が始まり、五輪から戻ってきた新井に腰椎の疲労骨折が判明するなど、計算外の事態が生じた。今年の東京五輪では、オリンピック期間中にプロ野球のシーズンが中断されるという違いはあるものの、阪神から先発の青柳晃洋、中継ぎの岩崎優、正捕手の梅野隆太郎という3人が選出されている。様々な符合は気になるところだが、今度こそ13年の時を経て、ぬか喜びに終わった「Vやねん!」の歓喜を味わえるのか。