ライフ

ワクチン不足で不安に苛まれる人たち 陰謀論に取り込まれることも

ワクチンは十分にあると言われていたときは落ち着いていた(イメージ、時事通信フォト)

ワクチンは十分にあると言われていたときは落ち着いていた(イメージ、時事通信フォト)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、免疫力が低下している成人を対象に三回目の追加接種が始まった。急速に広まる変異ウイルス(デルタ株)感染に対抗するためだが、日本では二回目の接種どころか、一回目の接種も日付が決まらない人が続出している。ライターの森鷹久氏が、先の見通しが立たないことで、陰謀論に取り込まれるなど、不安にさいなまれる人たちについてレポートする。

 * * *
「1日100万回以上のワクチン接種を」という、大風呂敷としか思えなかった大目標が達成され、政府が成果を誇っていられたのは束の間のことだった。ワクチン確保が予定通りにいかなくなり、結局「ワクチン接種」のスピードを調整するよう、すなわち、残り少ないワクチンをもっとゆっくり打て、と指示を出すことになった。この朝令暮改によって振り回されるのは、ワクチン接種を待つ人々だ。

 必要十分にある、と言われれば「接種はいつでもいい」と考えるのが人間だが、残り少ない、と言われれば急に「我先に打ちたい」と考えてしまうのも、やはり人間である。

「接種会場に来られてもどうしようもないのに、やはり藁にもすがる思いなのでしょう。ワクチン接種がまだ、というお年寄りが訪ねてきて、泣かれたりする。ワクチンが足りない、という報道が出て以降、そういう人が増えた印象です」

 こう話すのは、東京都内の新型コロナウイルスワクチン接種会場で、会場整理を行うスタッフの丸山恭子さん(仮名・30代)。ほんの一ヶ月前、「十分にある」「希望者は全員が打てる」とされていたときには、前述のような不安定な人たちが会場へやってくることはなかった。都内の大規模接種施設は、最初こそ接種を希望する人の長蛇の列ができたが、しばらくすると「ガラガラ」という報道もあったほどである。だが、在庫不足に関する報道が出始めると、これまで楽天的だった人々の中からも、焦ったり不安に駆られる人が増えたようだと話す。

「会場近くを毎日散歩している高齢の夫婦がいて、ワクチンは若い人から優先に、年寄りは最後でいいと温和な感じでお話をされていました。しかし最近になって、早めに打っておけばよかった、と気を落とされています。本当はこっそり打てるのではないか、と耳打ちされて、お金を払うとまで言われたほど。焦る方は確実に増えています」(丸山さん)

 関西地方の自治体で、ワクチン予約の専用電話スタッフとして働く青山光一さん(仮名・40代)も、市民の「焦り」を感じている一人。

「予約はできるが接種がいつになるかわからない、としか説明できない状況なのですが、見殺しにするのか、若者より高齢者を優先しろ、という電話はやはり、ワクチン不足の報道の後に明らかに増えました」(青山さん)

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン