海外のスポーツ興行の映像を見ると、会場に多くの人がいて、ほとんどの客がマスクをしていないことに驚く日本人は多いだろう。野球観戦に来た客に無料でワクチン接種を行うなどの取り組みが進んでいるためか、ワクチンを接種した人から順に、元の生活に戻っているようにさえ見える。
もちろん、こうした国々の感染者数や重症者数、死者数は、日本と比べるとかなり多いという現実がある。しかし「人々がマスクなしで元通りに見える生活をしている」という見せかけの事実が、一部の日本人にも影響を与えていると話すのは、都内の大手テレビ局社会部記者。
「一時は、望む人なら誰でも打てます、と言わんばかりの勢いでワクチン接種が進んでいましたが、ここに来て在庫不足が露呈しまさかの失速。あのまま進んでいれば、日本でもワクチン接種の有無によって行動制限が解かれる、という議論になったかもしれません。その見込みが当面立たなくなったから、一回でも接種した人たちが街に溢れ出している。飲んでいる客に取材をすると、海外でもそうなのだから自分たちだっていいだろう、と仰る。これを緩みだと断罪することは簡単ですが、我慢の限界、ワクチン接種の鈍化、まだはっきりとしていないワクチンの効果など、多すぎる情報に翻弄されているようにも見える。この辺りを解決しないと、どうにもならない」(大手テレビ局社会部記者)
新型コロナウイルスをめぐる政府の動きは、万事が後手後手だ。当初、提示されていたアフターコロナへのロードマップなど、今はその存在すら覚えている人は少ないだろう。決定と通知があまりに傲慢で杜撰なことを棚に上げて、国民がいうことを聞かないと政府は嘆き、後出しで渋々、国民の行動について容認の姿勢を見せている。改めて見直さなくとも、国民と政府の信頼関係は地に落ち、機能不全状態に陥っていることは子供でもわかるはずだ。
ワクチン接種が進む諸外国では、3回目の接種をスタートさせ、アフターコロナの日常を手に入れかけている事例もある。同じ地球の上で起きていることだが、我々にとっては文字通り「どこか遠い国の出来事」としかいいようがない。