バットを「縦に振る」技術とは?

 では、大谷選手の技術面の特徴はどこにあるのか。前半戦で印象に残るホームランを根鈴氏に聞くと、6月27日のタンパベイ・レイズ戦で打った第25号を挙げた。右投手のインコースのカットボールを、左中間に放り込んだ一打だ。

「バットを横に振ったら、おそらくは自打球でしょう。バットを縦に振れる大谷選手の技術だからこその一打です」

 横に振る、縦に振るとはどういうことか?

「野球盤のように地面と平行にバットを振るのが横振り。手首を支点に、リストを返すことでヘッドスピードを上げる打ち方です。日本でよく行われている『連続ティー』や『早振り』をやると、このクセが付きやすい。

 インパクトの一点でのヘッドスピードを上げるには適していますが、バットの面がすぐに消えてしまう。ピッチャーのレベルが高くなってくると、手元で曲がる変化球が増えてきて、内野ゴロの山になるだけです。アメリカに行けば、150kmを超えるフォーシームでも微妙に動くピッチャーがたくさんいます」

バットが上向きであれば打球に角度がつく(根鈴氏)

バットが上向きであれば打球に角度がつく(写真は根鈴雄次氏)

 そこで求められるのが、バットを縦に振る技術だ。ものすごくシンプルに言えば、ゴルフのスイングであり、イチロー氏がネクストサークルで見せていたスイングにも近い。

「昔から、『ボールの少し下にバットを入れて、バックスピンで打球を飛ばす』という考えがありますが、難易度の高いバッティングだと思っています。

 もっとシンプルに考えたほうがいい。羽子板をイメージしてみてください。羽根を打ち返すとき、子どもであっても、本能的に板を上向きにして返すはずです。バッティングも同じで、バットが上向きの角度でボールを捉えれば、打球に角度が付く。メジャーの考えは、ラインドライブでもスタンドに放り込む。バックスピンをかける意識はありません」

 昨今、『フライボール革命』が日本でも知られるようになったが、「フライボールに対する捉え方が日米では違うのではないか」というのが根鈴氏の見解だ。

「日本で『フライ』というと、フワッとした放物線をイメージしますが、アメリカはもっとライナーに近い軌道。言葉で表現するなら『ハイラインドライブ』。大谷選手がボールの下を打ってスピンをかけようとしていたら、あれほどの打球速度は出ないと思います」

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