続いて、同じく『仮面ライダーアギト』で、仮面ライダーG3/氷川誠役を演じたのが、要潤(40才)だ。要はどんな思いで演じていたのだろうか。話を聞いた。
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仮面ライダーに対する憧れは、正直あまりありませんでした。というのも、ぼくらの時代は再放送はしていましたが、ガッツリと見たことがなかったんです。
事務所にすすめられるままに仮面ライダーのオーディションを受け、受かったときは、それがどのくらいすごいことか、よくわかっていませんでした。いまだから正直に言いますが、仮面ライダーのイメージがその後の俳優人生にどう影響するかわからなかったので、むしろ、少し不安だったくらいです(笑い)。
ぼくは『アギト』がデビュー作で、演技経験がほとんどなかったから、かなり苦労しました。せりふを覚えて現場に行ってもうまく表現できずにワンテイクでOKをもらえないことがほとんどでした。
ただ、回を重ねるごとに反響は感じましたね。街中では誰にも気づかれないのに、遊園地や幼稚園の前を歩くと子供たちが寄ってきて、「ああ、自分は仮面ライダーなんだ」と、実感しました。
振り返ると『アギト』からは、役者としての心構えや仕事の面白さ、責任をすべて教えてもらった気がします。
最終回が近づくほどに、ぼくが演じた“氷川誠”とともに、このまま生きていきたいと思うようになっていましたし……。氷川は不器用で、無骨で、誰にも負けない勇気を持っている人物。いまでも彼のように生きていきたいと思っています。
『アギト』のスタッフはとてもチームワークがよくて、クランクアップのときは、みんな涙を流していたのを覚えています。この作品は、ぼくの原点といえる作品です。
20年以上経っているので、世間での印象は薄くなっていますが、ぼくは仮面ライダーという普遍的な番組に出逢えたことを誇りに思っています。
取材・文/廉屋友美乃 取材協力/前川亜紀
※女性セブン2021年7月29日・8月5日号