早くも折り返しへと突入した中川大志(23才)主演のドラマ『ボクの殺意が恋をした』(日本テレビ系)。中川がプライム帯の連続ドラマで初主演を飾っていることもあり、放送開始早々から注目を集めている。SNSなどの口コミには、「中川大志はコメディも上手い」、「主人公のポンコツ具合がクセになる」など、中川の好演に釘付けの視聴者も多くいるようだ。見る人を惹きつける中川の魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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本作は、過激な展開が話題となったドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)や、第43回日本アカデミー賞において最優秀脚本賞を受賞した映画『翔んで埼玉』などの脚本を手掛けてきた徳永友一(45才)らによるオリジナルドラマ。育ての親を殺された柊(中川)が、新木優子(27才)演じるヒロイン・美月に復讐を果たすべく、表向きは平凡な青年、裏の顔は殺し屋として奮闘していく物語だ。視聴率こそ奮っているとは言えないが、なんとも中毒性のあるドラマである。
その理由が、殺し屋を演じる中川のアンビバレントな感情表現の巧さだ。殺し屋が主人公の物語とあって時に展開はシリアスだが、彼はなんとも間の悪い男。緊張が張り詰めたシーンでも彼の滑稽さが際立ち、その上ターゲットの美月に対して恋心を抱くようにもなる。ジャンルとしては、“サスペンス・ラブコメディ”と呼べるだろう。本作は主人公の一人称視点で語られていく作品のため、主演を務めるには相応の実力が求められるが、中川は殺意と良心のはざまで揺れる心情を見事に表現し、物語の舵を切っていると思う。
この特異な物語に配されたキャスティングにも注目だ。柊を実の息子同然に育てながら、どこか仲の良い先輩後輩のような関係を築いてきた丈一郎役の藤木直人(49才)は、第1話で殺害されてしまうのだが、柊の記憶の中に登場し、諭すようなセリフ回しで柊との特殊な距離感を見せている。新木演じるヒロインの美月はクールで強気な性格の持ち主で、終始ポーカーフェイスでいるのが印象的だが、柊の言動に対する心の機微を繊細に表情に乗せている。
また、柊とは対照的な“殺し屋界のエース”を鈴木伸之(28才)が多少オーバー気味に演じることで、本作の盛り上げ役を買って出ている印象。こんな一筋縄ではいかないキャラクターたちに扮する面々を、弱冠23才の中川大志が率いているのだ。