国際情報

北京冬季五輪 村ひとつ壊して会場建設、バッハ会長も「奇跡のようだ」

北京冬季五輪に向け中国は様々な準備を進める(写真=中国通信/時事)

北京冬季五輪に向け中国は様々な準備を進める(写真=中国通信/時事)

 2022年2月に開催が迫っている北京五輪──。中国北部・河北省張家口市の「国家スキージャンプセンター」では、全長3mの巨大な“大砲”が100台以上並び、絶え間なく霧状の雪を発射していく。むき出しの地面が徐々に白銀に染まる。

 全長168mのこのジャンプ台は、2022年2月に開催される北京冬季五輪会場のなかで最大規模だ。中国の伝統的な縁起物「如意」に似ていることから、「雪如意」の愛称で呼ばれている。

 元日本テレビ中国総局長で『インサイドレポート 中国コロナの真相』(新潮新書)の著書があるジャーナリスト・宮崎紀秀氏が語る。

「降雪量が少ない地域で、スキー場として機能するかどうか心配する声が上がっていましたが、“降らないなら降らせれば良い”と考えるのが中国。大砲のような大型人工降雪機を100台以上配備して、雪を撒いて人工雪に頼る体制を整えています」

 北京五輪では3地区(北京市、延慶区、張家口市)・12会場で計109種目が行なわれる。選手村を含めてほとんどの会場が竣工したと報じられているが、実際には現在も多くの施設で工事が進行中だ。

〈一時も止まるな。一歩も間違えるな。一日も遅れるな〉

 建設中の施設には至るところにそんなスローガンが掲げられており、その姿勢は“なりふり構わぬ”の一言に尽きる。

「北京市北部では村がひとつ丸ごと取り壊され、山も削られました。河北省でもスノーボードの会場を作るために数千人の農民が土地を追われましたが、政府が多額の補償金を払うことで半ば無理矢理納得させた」(在中ジャーナリスト)

 習近平国家主席は今年1月、五輪会場を視察した際、「世界の先端レベルに達しており、党の指導と挙国体制、力を集中して大きな事業を成し遂げた」と豪語した。

 そうして準備された会場は、東京五輪とは何から何までスケールが違う。中国に詳しいジャーナリストの西谷格氏が語る。

「北京の北西75kmに位置する『延慶エリア』では、もともと水も電気も届いていなかった山間部に、わずか2年間で中国初のボブスレー会場とアルペンスキー会場を建設しました。ボブスレー会場は『雪遊龍』と呼ばれ、トラックが『龍』の形にデザインされている。中国らしさを前面に押し出した形です。

 周囲には五輪専用の気象台も新設され、視察に訪れたIOCのバッハ会長が会場を見て『奇跡のようだ』と驚嘆したほどです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
“飛ばし屋あいちゃん”の異名も
《女子ゴルフ後藤あい》16歳ドラコン女王“驚異のぶっ飛び”の秘密は「軟らかいシャフトで飛ばす」 アマチュアゴルファーでも実践できるのか? 専門家が解説
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン