「笑はせる 腕になるまで 泣く修業」(写真/林家三平提供)

父の「笑はせる 腕になるまで 泣く修業」の言が書かれた色紙(写真/林家三平提供)

 そのまま時が過ぎて18歳の時のこと。噺家になるのをどうしようかと悩んで林家こん平師匠に弟子入りをお願いしたら、2度断わられました。もうやめようかと思っているなかで、たまたま引き出しを開けたらその色紙がストンっと出てきた。今までどこにやったかもわからなくなっていたのに……。その色紙を見て、私は人生の決断のようなものができて、師匠に3度目のお願いにあがる決意をしたのです。今も色紙の父の言葉は僕の永遠のテーマです。

「泣く修業」というと辛そうに聞こえますが、私にとってはポジティブな言葉です。泣く修業でひとつひとつウケるようネタを変えていくことが腕になり、喜びに変わっていくという意味が込められている。ものすごいエネルギーが秘められている句だと思っています。

 先日、東京五輪の聖火リレーで走ることはできませんでしたが、点火セレモニーに参加しました。重い任でしたが、一門の家訓で父の言葉でもある「明るく元気に一生懸命」を心に唱えて、社会貢献として参加させていただきました。

 父も五輪が好きだったので、少しは親孝行できたかなと感じています。

※週刊ポスト2021年8月20日号

林家三平

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