スポーツ

甲子園に戻ってきた吹奏楽部の思い「選手の好きな曲を選びたい」

大阪桐蔭

大阪桐蔭は吹奏楽部も名門(写真は2018年。撮影/藤岡雅樹)

 新型コロナウイルスの感染防止策として無観客開催となった夏の甲子園だが、出場校それぞれ2000人を上限として、生徒や保護者ら学校関係者の入場が可能となっている。その中には、ブラスバンド(吹奏楽部)も含まれる。今春のセンバツでは事前録音した音源の使用しか許可されなかっただけに、吹奏楽部員たちにとっても待ちに待った晴れの舞台となる。大阪桐蔭をはじめとする吹奏楽部の“名門”を取材してきた柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。

 * * *
 甲子園にブラスバンドの生音が還ってきた。

 絶体絶命のピンチに追い込まれた投手の驚異的なピッチングや、窮地から試合をひっくり返す劇的なサヨナラホームランなど、甲子園球場で飛び出す奇跡的な展開は、生音の力も一因だと実感する毎日だ。一般のファンの姿がないからこそ余計に、ブラスバンドの音が存在感を放つ。

 今大会では、各校の応援団は内野指定席で観戦する決まりとなっているものの、ブラスバンドはアルプス席に陣取って応援をする。楽器を演奏する際の飛沫対策ゆえの“隔離”だろう。

 高校野球に伝統校や強豪校があるように、吹奏楽部にも全国屈指の名門がある。「美爆音」で知られる習志野(千葉)であり、今大会の出場校でいえば大阪桐蔭だ。

 習志野の吹奏楽部の顧問である石津谷治法氏と大阪桐蔭の吹奏楽部の梅田隆司監督はいわば盟友と呼べる間柄。そして、共通するのは「コンクール以上に甲子園応援を大切にしている」点だ。

 少し前のインタビューとなるが、石津谷氏は野球応援についてこう話していた。

「勝てば選手のおかげ、負ければブラバンのせい。私はね、ブラバンも勝負の命運を握っていると思う。目の前で繰り広げられているのは野球という真剣勝負。うちらは相手ベンチに向かってガンガンプレッシャーをかけていく」

 2019年のセンバツでは、その美爆音に対し、甲子園球場の近隣住人から苦情が入り、大会本部から音量を小さくするように注意を受けた。厳正に受け止めつつ、「音は小さくなっても、ポリシーは変わりません」と打ち明けてくれた。

 一方、大阪桐蔭の吹奏楽部は今年197人の部員がいて、野球部と同じIII類(体育・芸術コース)に通う。筆者は現在発売中の週刊朝日増刊『甲子園2021』(朝日新聞出版)で梅田監督をインタビューする機会に恵まれた。

「僕のポリシーは部員全員で演奏したいということ。コンクールにしても、マーチングにしても、人数制限があるじゃないですか。だから人数に制限のない甲子園応援を大切にしているんです。うちは『唄う吹奏楽部』をモットーにしている。できるだけ多くの生徒が参加して、多くの人と交流したい」

 そう言って、梅田監督は講演のパンフレットに記載された部史を広げてみせた。

「2006年の就任以来、僕は7回の甲子園制覇に立ち合っている。この2008年は浅村(栄斗、楽天)がいて、2012年は藤浪(晋太郎、阪神)が春夏連覇して、2018年の100回大会には根尾(昂、中日)、藤原(恭大、千葉ロッテ)がいた。この時の空気感は友好的でしたね。それにね、2019年春には、吹奏楽部が海外遠征で演奏できなかった東邦(愛知)の友情応援もして、結果的に東邦が日本一となったから、優勝応援は計8回になるんかな」

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン