残された道は解散か
自民党は今回の総裁選で「党員投票」を実施する方針だ。党員票が議員票と同数に換算されるため、派閥の数合わせだけでは決まらない。それだけに、高市氏の出馬をきっかけに総裁選は女性候補や若手が入り乱れた大乱戦になる可能性が出てきた。
「高市の出馬宣言で、“女性総理候補の最右翼”を自任する野田聖子も親しい議員に声をかけて推薦人集めを始めた。若手からも、河野太郎に近い議員たちが『政策論争を戦わせるべき』と主張して候補擁立の動きを見せている。選挙に弱い議員は誰が首相になれば選挙に有利になるかで選ぶから、収拾がつかなくなる」(閣僚経験者)
そうなると無投票再選のつもりだった菅首相は一転、絶体絶命のピンチに立たされる。
だから二階氏が進める「9月29日投開票」という総裁選日程は、無投票再選が無理な場合も想定して、菅首相が政権の緊急避難のために解散ができるように組まれている。
「いざというときは、総裁選投票日前に衆院を解散することで総裁選を強制的に中止し、総選挙後に改めてやり直すことになる」(二階派議員)
前出の有馬氏は言う。
「高市氏が推薦人20人の確保にメドが立てば、岸田氏ら他の候補も出馬に動くでしょう。菅総理はパラリンピック閉会後、総裁選が無投票にならないと判断した段階で解散を打つに違いありません。総選挙を乗り切ってみせるしか生き残る道がないからです」(前出・有馬氏)
しかし、自民党は総選挙で苦戦を免れない。
一方の麻生、安倍氏はたとえ菅首相が総裁選を回避して解散しても、総選挙に敗北すれば、それを理由に政権から引きずり降ろそうと逃げ道を塞いでいる。
かつて政権を共に支えた2人との戦いは、菅首相にとって厳しいものになりそうだ。
※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号