基本的に月2回、患者の家庭を訪問する

基本的に月2回、患者の家庭を訪問する

がん末期の患者を在宅で緩和ケア

 宮本医師が所属する医療グループ「楓の風」では、がん患者の対応が6割を占める。そのため、がん特有の痛みである「疼痛」などをコントロールする緩和ケアを中心に、点滴、輸血、人工呼吸器、外傷の手当まで可能だという。さらに宮本医師や看護師が、24時間体制で急変時に備えている。

「病院だといい治療ができる。家だと何もしない、苦しいのを我慢していると思われがちなんですけど、緩和ケアに関しては病院でも家でもやることは全く同じです。しっかりと症状を取らないと最期まで家にはいられないので、むしろ自宅のほうが病院よりも苦痛は取っていると思います。

 患者の中には、貧血が進行して立ちくらみや、すこし動いただけで息苦しいという方がいるので、症状緩和が期待できるケースに限定して輸血をしています」

 宮本医師が担当しているがん患者の中には、病院の主治医から病状について、詳しく説明を受けておらず、状況が理解できてない人が少なくないという。

「標準治療が効かなくなって、在宅医療に紹介されてくる患者が多いのですが、先の見通しはほとんど説明されていない場合もあります。“あと数年しか生きられない”と患者は思っているのですが、実際はかなり進行していて1~2ヶ月程度しかないこともあります。いきなり余命宣告はしませんが、残された時間の使い方に関わるので、本人や家族に間接的に伝えるようにしています」

 もう一つ、宮本医師が気にかかっているのが、自由診療のがん治療である。

 有効性が何も証明されていない“がん免疫療法”などを、高額な費用で行うクリニックは数多く存在する。医療モラルを欠いた行為だが、現時点では直接規制する法律はない。非常識な免疫クリニックの対応に直面することもある、と宮本医師は明かした。

「標準治療は効かなくなって、病院から私たち在宅診療を紹介されると同時に、自由診療の免疫クリニックの治療を始める人が多いですね。最期まで闘い続けて死んでいくのが、日本的な美学になっているのかもしれません。それで、怪しげな免疫クリニックに行ってしまうのでしょう。

 最近も看取り体制に入った患者の自宅に、ある免疫クリニックの看護師が上がってきて、ほとんど説明もなく勝手に点滴をしていく、ということがありました。亡くなる数時間前にです。患者の命をなんとも思っていない恐ろしい人たちだと感じました」

 科学的根拠のない治療に対して高額な費用を負担させるがん免疫クリニックの治療には、どうか注意していただきたい。

 政府は新型コロナの中等症であっても自宅療養とする方針を示したが、在宅医療のクリニックが果たして対応できるのか、宮本医師に聞いてみた。

「一般的な在宅医療のクリニックは、進行がんや慢性疾患の患者が自宅で穏やかに生活するのを支えることが目標です。一方、新型コロナのように、急性期の患者は常にモニタリングして治療しなければ命を救えません。そのような対応は、医師が少ない在宅医療のクリニックではマンパワー的に難しいでしょう。私たちは、コロナで入院できない終末期などの患者を自宅で診る、という役割を担っていきたいと思います」

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