ライフ

50歳になった羽生善治「引き際の基準は自分の中にあります」

50歳を迎えた羽生善治は自身の変化をどう受け止め、前に進む気力を維持しているのか(写真/共同通信社)

50歳を迎えた羽生善治は自身の変化をどう受け止め、前に進む気力を維持しているのか(写真/共同通信社)

 現在、50歳となった羽生善治。第一線で戦う気力は失わない。〈楽観はしない。ましてや、悲観もしない。ひたすら平常心で〉──かつて著書『決断力』の中で、「勝つ秘訣」についてそう語った天才棋士は、自身の変化をどう受け止め、前に進む気力を維持しているのか。将棋観戦記者の大川慎太郎氏がレポートする。(文中一部敬称略)

 * * *
 将棋界のありとあらゆる記録を更新してきた羽生善治。最後の関門と言われているのが、タイトル通算獲得100期だろう(現在は99期)。今年5月に羽生は王位戦の挑戦者決定戦に進出した。勝てば藤井聡太王位(19)への挑戦権を獲得する一番で大きな注目を集めたが、豊島竜王に惜敗した。この敗戦をどう考えているのか。

「大事なのは、そういう位置まで行き続けることです。そうすれば、次のチャンスはまた来ます。結果は残念でしたけど、その繰り返しは大事だと思ってます」

 ここでも「続ける」という言葉が出た。継続が未来を創ると信じる羽生は、いまは何をモチベーションにして将棋を続けているのだろうか。

「新しい発見があるというのは、すごく大事なことだと思っています。一日一回でも、何かを見つけていくことをモチベーションにしています。発見があると、進歩している実感がある。それが大事なことで、同じところを堂々巡りしていたり、何の進歩もなかったりするとモチベーションが下がりやすいので」

 だが難しさもある。年齢を重ねることで「知っていることが増えるので、発見の頻度が減る」というのだ。

「でも、それは心持ちというか、考え方の問題です。発見がないと思って見ていたら見つからないでしょう。見つけようという姿勢を持つことが大事なんです」

 新しい発見というのは盤上だけではない。昨年からは世界中がコロナ禍という状況で、誰もが経験したことのない現実に直面している。将棋界も対局は続行しているが、イベントなどでファンと触れ合う機会は激減した。当たり前だったことが消失し、モチベーションどころか、精神の安定を図るのも難しい人もいることだろう。パンデミック下で、羽生はどう生活していたのだろうか。何か発見はあったのだろうか。

「1回目の緊急事態宣言時に将棋の本を書きました(『現代調の将棋の研究』、浅川書房)。忙しくて10年以上は書いていなかったと思いますが、自分から編集者に連絡して、『書きたい』とお願いしました。こういう時期でなかったらできませんでしたね。ずっと家の中にいると、どうしても考え方も閉じこもりがちになる。なんとなく感じていることを整理する機会にもなるので、アウトプットをしていくことは大事だと思いました。別に仕事でなくてもどんなことでもいいので」

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン