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西郷輝彦 ステージ4のがん闘病「薬剤を打つだけ」の最先端治療とは

「前立腺がんの標準治療を受けたにもかかわらず、転移したり進行したりしている患者のための治療法です。基本的には、ルテシウムという薬剤を静脈に注射するだけ。体に負担をかけないので、48時間ほど経過観察をするだけで退院できます」

 静脈に注入されたルテシウムは、前立腺がんの細胞表面にある特殊なたんぱく質である「PSMA」と結合。薬剤が放射線を出すことで、がん細胞を消滅させる。薬剤があれば日本でも治療ができそうだが、扱う病院はほとんどない。

「薬剤が放射線を発するため、厳重に扱う必要があります。まだ日本では取り扱いのガイドラインがなく、対応できる医師がほとんどいない。そのため、海外で治療を受けるケースが多いのです」(窪田さん)

 西郷は1回目の注射を打った後、動揺していた。なぜなら、減るはずの数字が逆に増えていたからだ。325だったPSAの値は510になっていた。1回目で効果がないということは、体質的に合わないのでは? 残り2回で本当に効果があるのか? オーストラリアでの治療が最後の希望だっただけに、結果は重く心にのしかかった。

 PSMAの薬剤投与は8週間の間隔をおいて行う。日本での標準治療と比べ多額の費用と時間がかかるため、1回で諦めて帰国する患者もいるという。しかし、西郷は諦めなかった。2回目の投与に向けて、主治医たちとミーティングを重ね、ほかの薬との併用や投与の方法など、成功する方法を模索した。そして迎えた2回目の薬剤投与。西郷は祈るような気持ちで結果を待った。そしてCT画像を見た瞬間、こう叫んだ。

「がんが消えた!」

 力強く叫ぶ横では、がんを発症して10年もの間、闘病を支えてきた妻の明子さんが涙を浮かべていた。

 彼のように、オーストラリアでPSMA治療を受ける日本人は少なくないという。

 海外でのがん治療をアテンドする「がんメディカルサービス」の竹内規夫さんが言う。

「この治療はEU諸国やアメリカ、イスラエルなどでも受けることができますが、日本との時差がほとんどないことや、英語が通じることからオーストラリアが選ばれるのでしょう。海外でこうした治療を受けるには、日本の紹介会社や病院を介して、現地のコーディネーターに依頼する必要があります。コーディネーターに依頼さえできれば、個人で用意するのはパスポートくらいです」

 誰でもできそうに聞こえるが、治療費を用意するのは、簡単ではないかもしれない。

「1回の投与につき150万~200万円ほどかかります。西郷さんのように3回の投与を行うなら、おそらく600万円ほどでしょう。さらに渡航費や現地での生活費を含めると、1000万円近くになり、一般の人ではなかなか手が出せないでしょう」(窪田さん)

 治療のためにオーストラリアへ渡ってから約4か月が経った。西郷が笑顔で帰国する日は近いだろう。

※女性セブン2021年9月9日号

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