スポーツ

「打倒巨人」が合言葉だった 昭和のプロ野球選手、銀座での「夜の延長戦」

球界の大物たちが「銀座の夜」の思い出を振り返る(写真はイメージ)

球界の大物たちが「銀座の夜」の思い出を振り返る(写真はイメージ)

 昭和20代頃から日本一の繁華街として“男たちの憧れ”だった銀座。文壇や政財界の関係者が多い銀座はスポーツ選手にとってはハードルの高い場所だったが、それでも一流のプロ野球選手は銀座を愛した。中でも人気だったのが、直木賞作家の山口洋子が率いる「姫」。球界の大物たちが思い出を振り返る。

 * * *
 1983年の日本シリーズで巨人を4勝3敗で破って日本一になった西武ライオンズ。埼玉・所沢の西武球場(当時)横の特設会場でビールかけを終えた東尾修、田淵幸一、大田卓司、永射保、工藤公康ら主力選手たちの姿は、東京・銀座にあった。そう、二次会の場所はクラブ「姫」である。主力として日本一に貢献した山崎裕之もその宴に参加したひとりだった。

「私はお酒があまり得意じゃないですが、初めて巨人に勝って日本一になったので、1度だけ『姫』に繰り出したんです。みんな大喜びで羽目を外して、今やソフトバンクの監督をしている工藤公康が酔っぱらって床に大の字になって寝ていたという記憶があります。

 銀座が好きな東尾や田淵たちが仕切ってくれていた。我々はついていくだけでしたが、『姫』のママの山口洋子さんが西武ライオンズの“私設応援団長”として有名だったこともあり、その時は『姫』が貸し切りだったと記憶しています」

 当時、プロ野球選手にとって銀座で飲めるというのは「一流」の証だった。

「特に関西から遠征に来たチームの選手は地方では遊べないので羽を伸ばす意味合いもあったようです。銀座好きで有名な選手が打席に入ると、“銀座が終わっちゃうぞ”というヤジが飛び、つい笑ってしまうこともありましたね」(山崎)

「巨人に勝ったら銀座」

 銀座への“はやる気持ち”は身内からもぶつけられた。ヤクルトの元エース・松岡弘はこう証言する。

「ボクが入団した当時のサンケイは凄かった。個性的で我が強い選手ばかり。特に内野手は個性的で、マウンドでモタモタしていると、四方から“打たせろ”“ストライク投げろ”とうるさい。9時を過ぎると“約束してるんだから早く試合を終わらせろ”としょっちゅう小石が飛んできました」

 カミソリシュートを武器に“巨人キラー”の異名をとった大洋ホエールズ(現DeNA)の元エース・平松政次も銀座に足繁く通った選手である。

「ボクもよく銀座には足を運びました。後楽園で(巨人戦に)勝って銀座に行くのが目標だったからね」

 しかし、巨人の人気が凄まじかった当時、他球団の選手が気持ちよく酔うためには、「巨人に勝った」という“切符”が必要だった。

「負けたら? 行かないですよ。みっともない。巨人に勝って店に行くと、“今日はいいピッチングだった”とお客さんから声をかけられて、それを励みに野球をやっていたようなもの(笑)。(大洋の本拠地である)川崎球場でも巨人戦で勝つと銀座まで遠征していた。とにかく巨人、巨人、巨人の時代でした」(平松)

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン